あんぱん、黒パン、甘食
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本郷「明月堂」は創業明治25年(1892年)の老舗パン屋さん。
名物の甘食はじめ、
あんぱんや黒パン創業の頃から変わらない製法で
つまり110年以上も同じパンを・・・
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・・同じパンを今も毎日焼いているのだそう。
なんてこともないようなおやつパンに見えるけれど
どれも、ちょっとないおいしさ。
東大のある本郷は
かつては文人墨客の多く住むハイカラな町だった。
なかでもミルクホールやパン屋は
さぞお洒落なお店、だったのではないか。
明治37年に新宿中村屋が元祖クリームパンを創ったのも本郷の地です。
パッケージもキュートなタマゴパン ストライプの袋にロックケーキ
本郷三丁目交差点から見えるステキな屋号ロゴも
当時の流行だったのでしょう。
そんなモダンな町のメインストリートで
若者や舌の肥えた文士たちに向けて焼かれたパンが
これほど好ましいことに、あらためて驚かされます
素晴らしいベテラン職人の4代目が退いた今
レシピは変わらず5代目へと受け継がれ
驚くほどの手間ひまをかけて明月堂のパンは焼かれ続ける。
蒸しパンとはまったく異なる噛み心地にぞっこん
ふんわりタイプの甘食が好きなら
店の一番人気は創業の三年後から作りはじめた
やさしい口当たりの甘食。
ファンが多く日に200個(100組)も焼くのだそうですが
すべてが手作業で、大すり鉢で一度に作るのは100個が限界
午後2時半と夕方6時頃の2度に分けて焼き上げます。
その伝統の製法とは、
手でふるった小麦粉(!)卵、砂糖、油脂、重曹少々を
大きなすり鉢に入れ、 これをすりこぎで500回以上もすり混ぜて
細かな空気を含ませたら、ひとつずつ天板に絞り出して窯で焼き上げる。
ふっくら柔らかな甘食の出来上がりです。
ブドウパン たっぷり巻き込んだレーズン
そして
自称“和製おやつパン好き”&
“ジャムパンもパン屋さんの試金石”と言っちゃった者としては
蒸さずに焼くムッチリさっくりした黒パンや
ジャムパン、ブドウパンなどシンプルなパンに烈しく注目、
なかでもこしあんぱんの好ましさは吹聴したくなるほど。
照りのないシンプルな姿もたまりません。
この“噛み心地”にさらり、としたこしあん。
これ以上に無いほどに“あん”とパンがしっくりとなじんでいます。
あんはずっと昔からなじみの製餡所が炊いているそう。
手作業の包あんなどもあいまってお店の味が出るのでしょう。
ああ、味に歴史あり哉
こしあんを包んだあんぱん 断面
ところで最近、自覚したんだけど
どうやら明治・大正から営む店のパンがすんごく「好み」。
人形町「サンドウィッチパーラーまつむら」や「銀座木村家」など。
ジャムパンはじめ、和製おやつパンの生地に
グぃッと惹きつけられます。
共通するのは微妙にシッカリとした噛み応え。
(歯応え、というよりは)“噛む”おいしさとパンの香り。
明月堂では菓子パン用に無塩ショートニングを使うのです。
手作りのパンは時間が経てば固くなるけれど、
よけいな香味を感じさせず、リッチ過ぎないのも好み。
明治生まれの和製パンは
「手でふるって捏ねた小麦粉を発酵させ、パン窯の火で焼き上げる」、
そんな作業工程をイメージさせる力強さを感じます。
それが100年以上前もこの地で好まれていたのだから
明治文士に親近感が沸いてくる。
木の葉型的ビミョーなだ円形、いちごジャムのジャムパン
……
ところで。
小豆あんの好みはしばしば「こしあん」「粒あん」で分かれるところ。
作家たちが自らの好みを書いた文章も少なくない。
たとえば林望、酒井順子、入江敦彦さんはこしあんへの愛を述べていたし
甘党の芸術家、横尾忠則は根っからの粒あん好き、など。
で、どちらもなかなか相容れないほど、その好みは頑強だったりもする。
ワタクシの場合、以前は明らかな粒(つぶし)あん派。
“小豆あん”に限らずく
豆類全般、芋・穀類、果実など皮ごと食べたがる。
むしろ皮ばかり食べたいとさえ思うことも。
タマゴサンド ヨーグルトみかん
そして
そういった好み、というか固定観念を軽々と一蹴、
ガちょーンと覆してくれるモノや人には一目置いてしまう。
それが明月堂のこしあんぱん。
ここのあんぱん類は
つぶしあんやいもあん、栗あんなどバラエティに富んでる。
けれどあまりにも、“こしあんぱん”を好きなので
他のあんを食べたことがない(うそ、つぶしあんも一度)。
大正時代に流行したタマゴパン。油脂は使わず サクッとサクサク
たっぷり干しぶどうを巻き込んだブドウパン
ずっしりムッチリこんがり焼いた黒パン
いちごジャムを包んで焼いたジャムパン
そして日持ちよくやさしい風味のタマゴパンや
レーズンどっさりのロックケーキなど昔と変わらぬ焼き菓子たち
あんぱん(つぶしあん)
自分にとっては懐かしさなど無関係に
どれも、マコトに好ましい味なのです。
生まれる時代を間違えたのかいな…。
和製パンへの想いがじわじわじわっと。
レーズンどっさりのロックケーキ
※明月堂はじめ文中登場のパン屋さんは
『東京 いとしの和菓子』所収エッセイ
「日本のおやつぱんと和菓子の甘い関係」に詳しいです。
●明月堂
東京都文京区本郷4-37-14 8時〜19時半 日祝定休 土曜不定休
※本郷三丁目交差点から東大方面へ徒歩30秒
●お菓子とパンのデータ
・甘食(2個一組)160円 ・あんぱん(こし、つぶし)120円:ex65g
・ジャムパン(いちごジャム)120円:ex79g ・ぶどうパン120円 ・黒パン(焼き、黒糖風味、ごま)140円:ex104g
・タマゴパン一袋320円:ex18g
・ロックケーキ(レーズン)5個一袋320円:ex35g
・タマゴサンド160円・ヨーグルトみかん170円
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ところでわたしはタマゴパンが大好きです。
そう、あんぱんはやはり、こういったお店のものがひと味違いますね。しかしタマゴパンをお好きとは!渋い。昔は赤ちゃん向きだったと聞いたことがあります。で、もちろん私もフランス系ドイツ系も好きなのですが。町のパン屋さんにはどーしても抗いがたい魅力を感じてしまいます。
やーやー、明月堂!懐かしい! 昔本郷三丁目でバイトしてた時にお世話になってました☆
朝に昼を買って、帰りに安くなるパンを買って(笑)(近江屋のあんぱんもいけてます)
私も粒あん派でしたが、ここのあんぱんは迷うもののこしあんぱんを必ず買ってました。 あんこがおいしいんですよね〜。 かぼちゃあんとかも♪
甘食もリッチな時は(笑)で、惣菜パンもいけとる!パン屋さんって感じしないんですよね〜
なんかいつもコメ長くなりすいませんです(@_@)
まあ一月ですから(笑)あけましておめでとうございます♪今年もよろしくお願いします。
本郷はた〜くさんおいしいお菓子がありますねー。
>私も粒あん派でしたが、ここのあんぱんは迷うもののこしあんぱんを必ず買ってました。
う、嬉しい〜〜〜、さっすがトッコさん、わかってくれてる。そーなんですよね、こしあん。うんうん惣菜パンもうまい!4代目のご主人がとても優しい方で、パンに人柄が出てるってかんじです。おお、近江屋のあんぱんもチェックしてましたか、私も好きです、あとクリームブレートも好きなんです。コメントたっぷり大大歓迎、遠慮は無用、読ませて頂くのは私の最大の楽しみのひとつなのですよ♪
何か伝統工芸でもやっていそうなお店と思っていました。 そのうち、あんぱんなど買いに行きたいですね。
黒パンというとロシアの酸味のあるものを思い出すのですが、こちらは黒糖の甘いパンみたいですね。
ここ「明月堂」のあんパンはこしあんですか!
私も粒あん派なのですが、物によってこしあんがよかったり、いや断然粒あん!だったり、変なこだわり、あります・・・。
蒸しパンとは全く異なる噛み心地の黒パン、う〜ん、どんなんだろ?
遅くなってしまってすみません。
伝統工芸…あのロゴにはそんな雰囲気ありますね。黒パンはいわゆる黒蒸しパン的ポジションなのですが、明月堂では蒸してないのです。甘さ控えめで食べやすい菓子パンです。
でしょ!私は断然見た目的にはテリなしが好きです。明月堂は粒あん、栗あん、芋あん、平べったい粒あんなど種類豊富なのですが、こしあんがいいんですよ〜。あん好きにはアイテム別、というか個別に好みがあるのでしょうね。そーゆーこだわりをぐだぐだおしゃべりするのもまた楽しかったりね。黒パンの食感は微妙なので、いつかぜひ召し上がってほしい、です。
遅くなってすみません。
本郷はすごいのですよ〜。私の好きな散歩コースのひとつ。もし良かったらお手元の拙著の散歩エッセイ中「文人ゆかりの本郷菊坂あたり」の項をご覧下さい。明月堂はじめ、たくさんのポイントを掲載してます。役に立つはず、なのですが。むろん湯島からのコースも楽しいですよ♪
甘食は2時半と6時頃に焼き上がり。
その頃ねらえば手に入るはず。でも私はあんぱんと黒パンがそれ以上に好きです。交差点角=本郷三原堂ですね。イイお店ですよね♪
コメントさせていただくのはかなり久しぶりですが、かなり頻繁に拝見させて頂いております
古い記事に申し訳ありませんが、私もついつい先日お伺いしてこちらの甘食に感動したばかりなので思わずコメントさせていただいたしまいました
一日二度に分けて焼き上げているのですね〜
そんな話をしると、益々リスペクト!
シンプルながら本当に美味しいです
当該レポートとは関係ありませんが、御ブログにリンクを張らせて戴きました(今までブックマークでやっておりましたが、最近やっと慣れてきて自分でリンクが張れるようになりました←レベル低いですよね。。。)。
ご連絡が後になってしまい申し訳ありません、もし問題があればご連絡下さい
今度ともよろしくお願いいたします m(_ _)m
こんばんは〜
お返事が遅れてすみません。
この甘食はオンリーワンの味わいですね。すり鉢とすりこぎがポイントかも。なにせ厨房には機械らしい器具はほとんどないんですよ。甘食は昔ながらの2個一組、頑張っても一度に(50組)が限度。それでも機械化しないのですからリスペクト、ですね。
リンクありがとうございます。サイドバーってなかなか手を付けにくいですよね〜。後ほどこちらからもリンクさせてください。こちらこそよろしくお願いします〜。