浮島製“水無月”の切落し 石臼で搗くだんごは絶品“みたらしだんご”
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根津駅1番出口から不忍通りを渡るとすぐに、
「笹屋菓子舗」はあります。
はっきり言って地味な店構え・・・
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……(失礼ながら)店頭に並ぶパックに入った餅菓子類は
残念なことにウインドゥ越しではあまり魅力的に見えない。
それゆえか、ドア越しに入りにくい雰囲気も相まって、
スルーしてしまうヒトが少なくないような気がします。
言問通りに面して
・・・・
さて、人気散歩コースのひとつ根津周辺、
一度は出かけたことある人も多いでしょう。
根津神社辺りのマストおやつと言えば
「根津のたいやき」或いは[芋甚のアイスモナカ] 、
だけど…「笹屋菓子舗」のみたらしだんごを試したヒトがいるだろうか?
一本120円、通常はワンパック2〜3本
一見では餅菓子などとりとめなく扱って見えちゃう(たびたび失礼)
「笹屋菓子舗」とは“じつは隠れた名店”。
根津駅から数秒という場所にさりげなーく佇んでいる。
たとえば、そのみたらしだんごのおいしさたるや!!絶品とよびたい。
上新粉を蒸かして石臼で搗き、こんがり焼いた本格派♪、
シコシコの歯ごたえ!作りたてのモチモチ感。
香ばしいお焦げに甘辛いたれもた〜っぷり、
これぞ至福の串だんご♪
焼きたて!ほわんほわんのどらやき♪
あるいは運がよければ“浮島”の切落しに出会える。
(個人的確率は3回に1度くらい)
浮島とは和風ケーキとも呼べるふわっとした口当たりの蒸し菓子。
材料に白こしあん、卵、上新粉などを使い
軽い食感と口どけの良さから上生菓子にたびたび用いられます。
笹屋菓子舗では主に茶席用に注文を受けた際、調製しており、
四角い型に流して蒸し上げ、切り分けて仕上げます。
(参考までに自宅で浮島を作った時の記事はこちら)
こちらも切落し、浮島は棹物でも頻用される。二色重ねが効果的
その際切り落としたフチをひとつにまとめて
カステラの耳の如く徳用パックとして販売するというわけ。
いうなれば“浮島”の「福耳」だ。
多くの端っこがそうであるように、この浮島の切落し
そんじょそこらでは味わえないおいしさ!
そう、「笹屋菓子舗」は
江戸千家蓮華庵の主菓子をはじめ、
知る人ぞ知る茶席用菓子の調製処なのであります。
抹茶水羊羹
初代は
京都の老舗(巻紙状“どら焼”で名高い)「笹谷伊織」で職長を務めたのち
昭和30年“笹屋”の名を頂きこの地で開業。
木型をで作るような菓子もすべて手でこなすスゴ腕名人だったそう。
(そもそも木型を扱うのだって熟練の技が必要だ。)
六月の薯蕷饅頭は織部にあやめの焼き印
茶席菓子を主に扱うようになったのは二代目から。
とても研究熱心だったそうで茶道の水屋仕事から修行、
茶菓づくりの研鑽を積み、その代表的茶席菓子が「蓬莱山」。
代表銘菓「蓬莱山」。二年ほど前偶然店頭に出ていたものを購入。
「蓬莱山」とは山芋ベースの薯蕷生地で紅・黄・緑・黒の餡を包んだ、
割ると五色が美しいお饅頭。
中国故事にちなんだおめでたい上生菓子で
笹屋製は江戸千家の初釜をはじめ特別な茶会の席で主菓子として用いられています。
ワタクシが笹屋菓子舗を知るきっかけとなったのは
歌人中村汀女が詠んだ「蓬莱山」の句に拠るところ。
「愛で作りけん春著にも きそはしめ」
きそはしめ=著衣始、は正月の行事です。
で、「蓬莱山」は基本的に要予約ですが、
同じ餡を使った“石衣”なら通年入手可能。
紅色、鶯、小豆の三色トリュフのようで、
すーっとなめらかに口で溶ける愛らしくやさしい菓子。
蓬莱山の餡を使った“石衣”、小さいけれど手間のかかる半生菓子だ
というわけで、笹屋では毎日こしらえる茶席菓子。
そのひとつが浮島なのです。
そして年に一度、裏千家の六月茶会のために主菓子を調製するのですが、
なんとこの茶会のために浮島をベースにした特製“水無月”をこしらえます。
水無月と言えば、ういろうや餅モノで作られるのが一般的だけど、
幸運にも!
ワタクシこの浮島製“水無月”の切落しに遭遇できました♪
そして思ったのだ。
完成品でなく、この“切落し”こそがワタクシ好みに違いあるまい。
だって好きなモノづくしの和菓子ならおやつにザクザク食べたいじゃん。
“夏越しの祓え”の行事菓子“水無月”の切落とし
完成品は浮島を三角の氷に見たてる
フワっとした二色の浮島に、とろっとなめらかなクリーム(寒氷かも)、
ふっくらと炊きあげたツヤツヤ大納言をどっさり乗せた
こんな水無月があるとは!和菓子屋通いしてた甲斐があるってもんです。
こういった切落し菓子はむろん不定期販売なので出会いは運次第、
一回に1〜2パック程度、店内のショーケースの上にひっそり並んでます。
おだんご買ったついでにでも訊ねてみてください。
切落としがウマイのだから完成品のお菓子がおいしいのは当然。
笹屋では下町らしい餅菓子から上生菓子、
そして昔ながらのキュートな焼菓子まですべて手作りなのだ。
たとえば
あんなしのわらび餅も必ず買うもののひとつ。
きなこたっぷりで絶妙なプルプル感がたまりません。
夏なら、小豆と抹茶二種の水羊羹が好み。
普段は抹茶菓子を好まないけれど
甘さはごく控えめに「京都丸久小山園」の抹茶をふんだんに使った瑞々しい涼菓。
しっかりしたほろ苦さと香りを楽しみました。
(参考までに小山園の松露記事はこちら)
手みやげにレーズン&カスタードクリームの和風ロール、とか
和風ロールはレーズンを散らした軽〜いカステラ風焼菓子、
洋菓子店製とはひと味違うしっとりとしたロールケーキ。
ママレイドブッセ「ロマンス」共々心和む味、
悪くないんですよね、昔ながらの和菓子屋製焼菓子って。
そういえばブッセを作る町の和菓子屋さん、山の手ではまず見かけなくなった。
ナボナはお菓子のホームラン王なんだけどなあ。
ま、みたらしだんごと浮島の切落し=“浮耳”の方が
数段魅力的ですが。
●過去の五色饅頭 関連記事
・玉英堂彦九郎の玉饅
●過去の中村汀女 関連記事
「香風の金魚・だんご・カステラなど」
「香風の夏の生菓子 錦玉など」
「源太の水ようかん」
「越後屋若狭の水ようかん」
「鎌倉の力餅家」
「京都中村軒の麦代餅」
「沖縄の李桃餅」
「萩の夏蜜柑丸漬」
「菊見せんべい総本店」他多数
★おまけの話★
貧乏性なのか切落しが好き。最たるモノは“まぐろ”の赤身、サクより切落としのビミョーなバランスがうまい。
笹屋のみたらしだんごはオススメした方全員が絶賛。個人的には東京で5本の指に入ると思う。
現在、笹屋では菓子づくりは数名の職人が手掛け、亡くなった二代目のお嬢さんが女将をつとめ和菓子好きな販売スタッフと店を守っている。
ちなみに別サイト「アロハな…」の最新記事 「ブーランジェリー・イアナック」 は女将さん(お嬢さん?)から訊いて以来、時折立ち寄っています。
●店のデータ
・笹屋菓子舗 文京区根津2−19−12 9時頃〜18時頃 水休
・みたらしだんご1本120円
・わらびもち(あんなし)165円
・石衣(三種一袋)250円
・蓬莱山(予約注文)1個430円
※五色の黒(こしあん)は土、緑は草木、黄は宇宙、紅は太陽、白は無限を意味する。
・和風ロール170円(材料:卵 砂糖 牛乳 小麦粉(ヴァイオレット)レーズン、自家製カスタードクリーム )
※注8月26日、当記事に加筆修正致しました。
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浮島の切り落としなんてもちろん初めてみましたけど、切り落としってなんてステキな響きなのでしょう(笑)
もとはお茶席用のお菓子だとしても、指でつまみ上げてあぐらかいて上向いてあ〜〜ん、なーんて食べ方でも許されるような。ダメ?
みたらし団子はどこにでもある気軽なお菓子だけに遠くまで買いに行こうと思わせるなんてすごいと思います。
涼しくなってカラっとした秋晴れの日に行ってみたいです。
みたらしもいい!(私ってばかなり単純です)
根津、ですね。行く機会も絶対あると思いますので、いつかの〜んびり散策してみたいです!
切り落としのようなもの、私も好きです。
マグロの切り落としも分かります!!
本来捨てちゃうかな?と思うようなところが結構美味しかったりするんですよね・・・。
私だって、見たときは激しく衝撃を受けました。そーいやカステラ以外ではたいやきの天音に黒糖羊羹の切り落としみたいのがあったけど。
逆立ちであろうが、湯船につかって一杯やりながらであろうが、懐深い和菓子だと思うのでユルされるでしょう、ただしご自宅に限るけど(笑)
言問通り、楽しいです。寺社が多いので、それに連れて和菓子屋さんの多くは供物菓子や茶席菓子を担っているようなんです。
>涼しくなってカラっとした秋晴れの日に行ってみたいです。
イイですね〜!!和菓子には(というか食べ物全般)そんな日が似合っていますよねえ。
水無月の浮島、豆好きは絶対そそられちゃいますよね〜。
マグロのきれいな色の切り落とし、見ると絶対買いたくなるもののひとつです。あ、そうそう宮崎のスーパーに並んでた地物の魚の麗しさもたまらなかったな〜。
お煎餅屋さんもたくさんあって、いつもどこで買おうか悩むのも楽しみです。
失礼、↑のコメントはいもすけさん宛でした。
いいところです、根津。ぜひトライして下さい♪
よっしゃぁ、待ってますよー!
今度は必ず、果川家の後、こちらに
出向かせていただきます。
おいしそうなお菓子たち
浮島好きかも。
みるからに、玉手箱のような
お菓子屋さんですね。
茶席に出てるお菓子が
簡単に手に入るって
いいですよね。
遅くなってすみません。楽しいお散歩になったようですね♪
次回はぜひぜひ目的のモノを手に出来ますように。
>茶席に出てるお菓子が
簡単に手に入るって
いいですよね。
ホント、気兼ねなくガシガシいただけるなんて。他の店でもやってくれないかしら。
ちょこちょこ拝見させて頂いています!専ら洋菓子(フランス菓子)をメインに食べ歩いていたのですが・・・・ひょんな事から和菓子の魅力にも開眼!「あんこ」より「餅菓子」「栗菓子」好きのへそ曲がりです(しかも甘い物はどちらかというと嫌い).
小石川〜根津あたりは,学生時によく徘徊していたので,もちろんこちらのお店も存じておりました.そして・・・・やはりスルーしていましたよ・・・もったいない!浮き島の『はじっこ』メチャクチャ魅力的です!「はじっこ好き」に加え「皮好き」としては・・・見逃せませぬ.
貴重な情報有り難うございます!
はじめまして、コメントありがとうございます。
笹屋の良さってホントわかりにくいんですよね〜。私も3回目あたりからようやく真価がわかってきたようです。
甘いモノ嫌いでお菓子好き!なんてアンビバレントな(笑)
浮島のはじっこはもちろん、おだんごもお気に召すのではないでしょうか。
こちらこそお役に立てたならウレシイです♪