どちらも“はなびら餅”…
☆東京の和菓子めぐり、下町歩きに必携の一冊!
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あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
お正月はいかがお過ごしでした?
我が家では元旦からさまざまな和菓子や・・・
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・・料理を揃えて法事を執り行ったのは例年通り。
法事の御供物は大きな座卓に乗り切らないほどバラエティに富んでいる。
(こんなかんじで)
お菓子類は食べきれないほど家中に溢れて、
毎度のことながら冬眠前の熊のように食いだめ出来ないのが残念です。
さて、和菓子好きにとって
新春を寿ぐ“はなびら餅”はイベント感のある楽しみ。
ここ数年は世間での認知度、ポピュラー度が一層高まり、
和菓子屋だけでなくデパート・スーパーでも取り扱う。
その分期待も大きくなりました。
そんな2010年
なんと、我が家では松屋常盤のはなびら餅が手に入っちゃった。
松屋常盤は京都御所南、堺町御門からほど近い御菓子調進所。
350年以上、十六代続くのこの老舗は
一般には焼菓子の“紫野味噌松風”がよく知られて取り寄せも可能です。
紫野味噌松風
そして定評あるのが茶席用生菓子のきんとん。
ごく柔らかな(そぼろ)きんとんはデリケート。
作りたてを味わうよう予約注文制です。
もはや松屋常磐=きんとん若しくは味噌松風、
てな印象さえ定着しているのではなかろうか。
きんとん
とはいえ、御菓子司ですから多少は季節モノも扱っている。
専門書では(一見客には入手不可であろう)餅モノや夏の葛菓子を見かけます。
いずれにせよ通常この店の生菓子は取り寄せなど不可能。
ましてや“はなびら餅”なんて考えも及ばなかったんだけど。
11月のうちに某タカシマヤから
(松屋常盤のはなびら餅、要りようですか?)と打診され
前のめりに「ぜ、ぜひに」とお願いした。
大晦日の午後四時半から六時なんて怒濤のような時間帯。
なのに強欲かつ食いしんぼの業でピックアップ&獲得したのです。
そして…
2010年元旦早朝、
期待に胸を膨らませて包みを解きあらわれたはなびら餅。
その衝撃たるや…
整列なんかしてられない。五個入り箱
(す、すげ〜)。
寿ぐにはおよそふさわしくない第一声。
五個入だけど、形はそれぞればらんばらーん。
どれをとっても大らか過ぎるその姿。
統一的に調えようという意図はおよそ感じられず、
ヨソ(の店)で何を作ろうと眼中になさそう。
餅は餅で(我が道を行く〜)てなかんじで好き勝手に並んでる。
しかもいきなり丸餅(←そもそも丸くない)が紅いし。
まあ、びっくりしたさー。
……
さてここで花びら餅の由来を少々。
新年に頂く花びら餅は宮中慶賀用の餅「御菱葩」を原型としたもの。
(川端道喜「御菱葩(おんひしはなびら)」の記事はこちら)
菱葩は薄くのばした白い丸餅に
紅い菱餅、白味噌、砂糖煮のふくさ牛蒡を乗せ二つ折りにした餅。
かつては朝廷で新年朝儀に仕えた者たちに配った“包み雑煮”です。 遡れば「歯固の儀式」に用いた菱葩は
もとはゴボウでなく押し鮎を用いたそうです。
-thumbnail2.jpg)
川端道喜「御菱葩」試みの餅
明治に入って茶道裏千家の初釜の主菓子となり
現在ではほとんどの茶席菓子処が調製している。
また近年一般化している“菱餅を除いた形態”を“花びら餅”と呼ぶことが多いようです。
それは白い丸餅に牛蒡と白味噌餡を挟む、のがスタンダードと思っていたけれど…。
…松屋常磐の花びら餅、
ベースの餅は淡紅く不定形、
味噌餡は白あんでなく小豆あんベース。
五個の統一感はきわめて希薄と言うか…各個体ともあまりにも個性的。
そして何より丸い餅への成型を目指してない(と思える)って、
ある意味まったく既成概念から脱却しちゃってます。
これをオキテ破りと言わずして何としよう。
すごいぞ、松屋常磐。
図らずも正月早朝から衝撃的なブツにご対面である。
そしてひとくち…!のけぞりました〜。
(うわ。きんとんみたい)
そう、すんなりと抵抗のない口当たりはあたかもこの店のきんとんのよう。
驚いたことに餅、味噌餡、そしてごぼう(!)すべての柔らかさは揃っている。
こんなふくさ牛蒡は初めてです。
そして歯応えのない餅がこれほど美味と感じたこともかつてなかった。
これ、カタイモノ好きとしては画期的なこと。
限界ぎりぎりまで柔らかい餅としっとりした餡、繊維感ゼロの牛蒡、
一つに溶けあい、ほのかな塩けに混じり合いながら口いっぱいに広がる。
なるほど この口あたりを目指すからこそ、餅の成型にはこだわらないのでしょう。
菓子づくりの基本はなるべく手で触る回数を控えること。
いじればいじるほど、風味や素材感が損なわれていくのは明白です。
おそらくはこの餅、作業中はあまりにも柔らかく ほぼ一発で形を決めてるのではなかろうか。
そもそもこの店のきんとんだって
そぼろあんをささっと迷うことなく箸で寄せたやり直しなし一発勝負のフレッシュなお菓子。
その作業風景はNHK“日本の美『和菓子』”('72) 、 桜映画社製作「和菓子」の映像で観たけれど。
そもそもきんとんからして堂々たる不揃い姿
このほどけるような口当たりの花びら餅もまた
ササササっと一呼吸でこしらえたのではないかと想像したくなる。
うーむまさに新年から目からウロコをたたき落とされてしまいました。
おかまいなしなルックスは劇的美味への伏線だったのです。
かっこよすぎるぞ松屋常磐ったら。
ワタクシもまたこの花びら餅の如く、
他に惑うことなく我が道を行きつつ、
なお味わい深いヒトになりたい。
と初日の出を拝む前にちょっと誓ってみた。
無理か…。
そんな2010年
本年も何卒よろしくお願いいたします。
今年はサクサク更新するぞ〜、なるべく。
2010年お正月
あんころりん
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●過去の松屋常盤の記事
・京都訪問
・味噌松風
●川端道喜他“はなびら餅”の記事
●太市の花びら餅記事
●松屋常盤(百味会URL)
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松屋常盤の花びら餅は餅重視なのでしょうか?
見るからにやわらかそうな感じがします。
お餅が薄紅色なのは菱餅と全てを包むお餅を合体させたような意図を感じます。 でも、白味噌仕立ての白あんではなく小豆のあん・・・宮中というより庶民的な感じがします。
もしかしたら探せば他にも色んな個性的な花びら餅があるかもしれないですね。
新年からステキなモノを見せていただきました、魅せられました。ありがとうありがとう。
新年華やかでピンクや白を基調にした
おめでたそうなお菓子の数々
すばらしいです。
ちょっと新年早々働きすぎて
体調を崩しましたので
あまり良い言葉が浮かびませんが
改めてコメントしたいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。
あんころりんさんは、お正月にどんなお菓子を食べてるのかしらん...と見に来たら!
さすが、読者の期待を裏切らないチョイスです。
そして私は味噌松風食べたい熱が再発してしまいました〜。
七草過ぎてのご挨拶になってしまいましたが、今年もよろしくお願いします。
餅だけでなく全体の一体感を大切にしていると感じました。ある意味餅の形にはあまりこだわっていないのかも。
>いろいろな
金沢には牛蒡でなく人参を使うところがあると聞きました、未確認ですけど。
あ〜〜わかってくれてありがとう〜。めちゃめちゃカッコイイでしょ。こんなに衝撃的なモノが今年初だなんて。この先ただキレイ、ただおいしい、では物足りなかったりして(笑)…なわけないですが。今年もいろいろ教えて下さいね〜。
今年もよろしくお願いしま〜す。
すっごくおいしかったのですよ〜。yottyanさんも感動なさると思いました。
年末年始ホントにお疲れさまでした、これから良く休んで、また美味しいものを食べに行きましょう!
今年もヨロシク〜。
積極的なチョイスっていうよりタナボタにすごいものが転がり込んできたってかんじです(笑)。
味噌松風って時々無性に食べたくなりますよね。
あの噛み心地がたまりません。
偶然ですね〜!私も松屋常磐さんの花びら餅頂きましたよ!箱を開けてビックリの『あか抜けない』見た目と裏腹に餡の美味な事!塩味少々強めで・・・しかし単なる甘塩っぱい味とは一線を画す,口溶けの良さ.味噌あん好きの私(それも味噌そのものといった感じの田舎臭い物が好き)でさえ,記憶に強ーく残りました.
31日に自宅にお持ち帰り後(人様から分けて頂いた物なので1個)ソッコーお腹に入りましたが,堪能しました.
こちらこそご挨拶が遅くなり失礼しました。
それはすごい!凌駕D1さんも驚かれましたか〜。あの味だから姿のゾンザイなかんじがかっこよく思える気がします。
それにしても思ったより多く入荷したのでしょうか。大晦日の朝にこしらえたそうですから松屋常磐頑張ったのね(ま、生ものっぽいしあがりですから)それにしてもあれは多くの方に見て(食べて)欲しいイッピンです。
今年もよろしくお願いします♪
こちらのはなびら餅、なんて、美味しそうなんでしょう!!
御餅さんたちも並んでられない(整列してられない)、だなんて、Happyエネルギーにあふれていそう!
御めでたい気分を存分に楽しめそうな一品ですねえ。食べてみたいです。
あああー。京都に行きたくなりますね♪
お返事が遅くなってごめんなさい!
美味しかったのですよ〜。
自由闊達なお餅たち、親しみのある味わいでした。下町の元気なお正月にも似合いそうかも。
京都、行きたいですね〜。また都内をご一緒しましょ♪
先日、1年振りにきんとんを購入しようと予約を入れた所、販売を止められ、現在は松風だけを作っているとのことでした。
京都では、松屋常盤と嘯月のきんとんが秀逸だったのですが、寂しくなります。
情報ありがとうございます。
予約するつもりだったとは、さぞがっかりされたことでしょうね。
じつは先月、ある筋に訊いたところでは、しばらく女将さんだけできんとんをおつくりになっていたそうなのですが、ここへきて疲れがでたようで。ちょっとお休みしたい、という様子らしいです。ご高齢なので心配ですが、希望をもって待とうと思います。
松風はご家族が後継しているようなので、安泰だと思われます。
いずこも、作り手が少ないのでこの先、どうなることやら・・・