↑淡い色合いも素晴らしい「栗きんとん」
↑煉り切り「翁菊」微妙な色合いの秘密は・・
栗のお菓子で最も味わいの深い一つ、
越後屋若狭の“栗きんとん”
数ある上生菓子の中でも最上級と言える一品です。
茶を引き立てることにおいても
お菓子としてもそのクオリティの高さは随一・・・
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と、えらそーに言っても上生菓子、全然詳しくないんだけど。
(茶の湯の稽古での「週一上生」もお休み中で。
言い訳はさておき。
夏も終わり、秋は一層上生菓子が楽しみ。
目にも美しい和菓子の数々、今は栗の時期を迎えて各店栗のお菓子が勢揃いの様子。
しかしながら・・・。
あまり熱心ではないのだ、栗のお菓子。
正確に言うと栗そのものが好きなので、
新鮮なストレート茹で栗よりはるかに美味いと思う“栗あん”には、
どうにも出会い難いのです。
問題は我が身にあり、というか・・
おしなべて、栗ベース物は小豆あんと比べるとどうも弱い。
↑龍昇亭西むらの栗むし羊かん
栗むし羊かんには好きな物もあり、自ら作ることもありますが、
栗あんの菓子は名産処のものでも
「それより栗本体ストレート、砂糖なしで食べたい」と積極性に乏しい、
栗菓子方面に引っ込み思案。
その中で!越後屋若狭の栗きんとんだけは燦然と輝く〜のだ。
思わずひれ伏すほどに素晴らしい栗のお菓子だと思います。
“稀なる味”とはこの栗きんとんにこそ捧げたい。
その「越後屋若狭」と言えば
夏の“水ようかん”の素晴らしさでもよく知られますが
もとより茶席用上生菓子を専門として江戸から続く名店中の銘店。
創業は240年以上、現存する江戸生え抜き本店のみで継続する菓子屋の中ではおそらく最も歴史ある老舗です。
(注:記事アップ後、“江戸生え抜きは本郷「壺屋」が最も古いのでは”、
とけんさんからご指摘があり〈本店のみで継続する菓子屋の中で〉の一文を加えました。)
(以前の記事に詳しいのでご覧下さい)
↑煉りきりの淡い桃色は濃い紅と白を重ねるので奥行き深い美しさ
現在も旧名本所辺りの一角でひっそりと営む店(今年新築)は完全予約制。
その高品質を持続して情趣深い、季節毎の生菓子には多くの文人や著名人の贔屓も多いようです。
そして、さすがの味の“栗きんとん”は10月いっぱいだけ。
量もたくさん出来ないので、2〜3日前から要予約の人気の高さ、
味わいなどもそれがうなずける美しいお菓子です。
栗が不作の今年('06)もまったくそうとはを感じさせない。
プロフェッショナルの高い技術と誇りがあります。
さすがに和菓子ながら時価です。
あらゆる栗あんの菓子でこれを上回るおいしい物があれば
真剣に食べてみたいものです。
そんなにおいしい物なんて世の中に一体どれくらいあるのでしょう?
和菓子ばかりでなくモンブランでもマロンクリームでも良いけど
お願いだから一度食べさせてくれ〜と思いますよ。←無知なの?
越後屋若狭の栗きんとんは
まずは見目からして心奪われるほどに“おいしそう”。
そして美しさにおいても当代随一か。
その淡く濁りのない卵色のそぼろきんとんの加減はあまりにも繊細。
ふれなば落ちん、てな具合です。で、見た目の食欲をそそる「花も団子も」あるお菓子。
だって上生菓子を見てお腹が“きゅうっ”となることはあまりないでしょ。
ひと目見て(早く食べたいっ)、一目散に家へ舞い戻りました
↑箱の中に二つ
まずお薄や煎茶など緑茶を点てて頂きましょう。でないと後悔します。
必ずやお菓子もお茶も感涙ものにおいしくなりますから、ぜひ。
そして黒文字(楊枝)などで切り、ひとくち含めばモンブラン以上になめらかな舌触り。
くくくくくぅー。
泣いてるのか笑ってるか自分でも判別しがたい歓喜かんき・ドルチェヴィータ!
しかも後味は洋菓子類をはるかに凌ぐほどに口溶けが良い。
栗の風味の良さではどんなケーキも及びません。
和栗の奥行きのある香りととろけるような味わいは心打たれるほど。
っていうか打たれた、まだ響く程に。り〜〜ん、と。
この栗きんとんは小豆漉し餡を芯にそぼろにした栗あん(栗薯預あん?かも)を
少しずつ、きんとん箸でていねいに付けたもの。
↑断面も繊細
越後屋若狭のきんとんの菓子は何れも立体感に優れ情趣もある。
この栗きんとんもそぼろ餡の一本ずつが活き活きとしてなお柔らかい。
お菓子の表情の豊かさは複雑な方向に入るそぼろの躍動感によるものですね。
この新鮮なそぼろ餡が端正な“美感”と感応的“美味そう〜”の両立を成している。
巧みなる技をしみじみ感じ入ります。
そしてほーんとに“類い希なる喜びの味”なのさ。
甘露甘露、お薄も美味なり。
最後に
かの和菓子好きの粋な歌人、中村汀女(何回登場したんだ、尊敬)は
越後屋若狭の春の煉り切り“玉椿”を
まことに見事なり
「早やすでに椿と勇み 告げにけり」 と詠んでいます。
栗きんとんであれば何と詠んだのでしょうか。
思わず自分の方が勇んで
「今行くぞ お願い待ってて 栗きんとん」詠み人知らず。
※注
越後屋若狭の以前の記事はこちら
◎おまけの話◎
これまでデパート出店はなかったようですが
この秋に初めて新宿タカシマヤにて
“数量、時間限定”で一週間のみ生菓子を一箱ずつ販売。
予約なしで近所で買えるなんてもう夢のよう、
早速初日に出掛けて心底満足&歓喜しました。
箱の中は栗きんとんが二つと煉りきりの翁菊が三つ。
お菓子は必ず周囲と分けて頂きます、が二つきりの栗きんとん。
一つは誰にも分けずにこっそり頂きました。ほほほ、うまさひとしお。
あれ、本店へも自宅から乗り換えなく訪問出来るのか(今さら確認)嬉しい。
◎★今日の和菓子語その13
「きんとん」金団、巾飩
きんとん、と言えばおせちの栗きんとん、て思うでしょ。
茶席菓子の「きんとん」は餡玉などの周囲にそぼろ餡を専用のきんとん箸でつけたもの。
ほのかにセサミSTキャラっぽい?形は店によっては平たかったり様々。
栗きんとんだけでなく色合いや組み合わせで四季折々の風物に表現、
祝い菓子にも用います。
ひな祭りには“引っちぎり”にも使われたり、
12月には“やぶこうじ”秋には“深山きんとん”で紅葉など、
御銘が変わりながら、通年の茶席菓子に登場するのです。
ちなみに有名な中津川の“栗きんとん”は茶巾絞りですね。
そもそもは「きんとんは中国から入ってきた
唐菓子「こん飩(とん)」に由来するという。
江戸末期にはきんとんというようになり
団子のような形が現在のような餡そぼろを
つけるようになった。」と和菓子歳時記にあります。
●お店データとあれこれ
★本所一ツ目 抹茶菓子「越後屋若狭」
住所:東京都墨田区千歳1-8-4
最寄の浜町 森下 両国 各駅から徒歩10分位
TEL 03-3631-3605
定休日 日曜、祝日 営業時間 10:00〜17:00
※注)完全予約制、お店にお菓子は並んでいませんが
電話でも親切に教えてくれます。敷居は高くないです。
※お店のプチ歴史
創業は明和二年(1765年)とも1740年頃とも。
240年ほどの歴史を持つ老舗中の老舗。
当時の大名屋敷の御用達で江戸時代のガイドブック『江戸買物独案内』(1824年刊)
にはすでに『本所一之橋角 越後屋若狭』が紹介されている。
名声を得た後は夏目漱石や棟方志功、伊藤博文、山県有朋、大隈重信、原敬といった
多くの政治家や文化人も贔屓にしていたそうです。
現在も質の高い主菓子は茶人や料亭に好んで利用されるようです。
↑菓子の銘が記された紙としきりのない進物用箱が新鮮
●菓子のデータ
・栗きんとん 今年は一個588円
☆進物用は五個入りから、自宅用なら要る数でOK
2〜3日前以上なるべく早くの予約を。
測定体重約39g
・翁菊おきなぎく 単純計算で427円位?
煉り切りに小豆漉し餡
測定体重約38g
※今回の特別出店では進物用箱の生菓子五個入りが2457円
※注1)煉り切りの過去記事はこちらとこちらとこちらなど多数あり
「主菓子]
※(注1)
主菓子(茶席用の甘味の充分な、量感のある和菓子)
についての過去記事はこちらとこちらとこちら等々
お薄についての記事はこちら※注3)主菓子(茶席用の甘味の充分な、量感のある和菓子)
についての過去記事はこちらとこちらとこちら
ラベル:墨田区 和菓子
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久寿..
1見素朴だけど存在感あるからすきだわ。
私もモンブランなどちょっと苦手な口なんですが
この口溶け具合(想像)と、丹念に作られた物。
またそぼろ感と中の餡がいいですね。
本当にこれで上品なお菓子の出来上がりです。
秋を楽しめそうですね。デパートの出店は
常にチェックですね。
栗きんとんと言い切っちゃうところがすごい。
栗きんとんといえば正月のあれしか知りません。
一口づつ大事に食べたい。いや、がぶっと・・・
とにかく食べたい。
いい季節になりましたねー。私も茹で栗大好きですー!半分に切って
一心不乱にスプーンでほじくっては食べ、食べ、食べ・・・気がつくと皮の山。
翁菊もおいしそー。職人のテクって素晴らしいですね。
今日は三越で赤福を買って帰ったとさー。美味しいけどなんかかなり甘い?気がした。
あのピラッと一枚風景画みたいのイイですよね♪オマケ感覚。
本当にようやくじっくり上生菓子が味わえる気候になりました。
この栗きんとんはおっしゃるとおり、味はもちろん本当に美しいのです。画像よりもずっと華やいで美味しそうな色と佇まいでした。あーライブでお見せしたーい。
yottyanさん
本当にいつでも頂きたいです。これがまた10月の上旬と下旬では栗の熟し方が変わって微妙に味も変わるのですよ〜。香りも心ゆくまで楽しめる
やはり秋だからこそおいしいんでしょうね。
ところで本文読み返すと私がモンブラン嫌いに思えちゃいますね。実は洋菓子の中でモンブランって好きなんですよ(笑)。それにも関わらずこの栗きんとんの方に軍配あがっちゃうほど素晴らしい味なのですよー。
和菓子の栗きんとんは大体この形か茶巾絞りのかたちのどちらかみたいです。
お正月の方が最近のものなんだそうです、実は。
あちこさん
一度で良いから頬張らせた〜〜い。
でも絶対お茶付きでね。
本当にすごくすごくおいしいですよ。おそらく自分史上では一番好きな上生菓子です。最高って言えちゃうくらい♪ぜひぜひぜい、あちこさんには食べさせてみたいわー。ぱくりと。
そうそう栗って食べ出すとすごい量の痕跡が目の前に出てきて驚くんですよねー。今年はすごい不作らしいんですけど、何故か栗のすごく良いお菓子に出会えて不思議。皆さん不作だと気合いが入るのかな?
>赤福って
そうですよね。かなり甘いんですよね、実は。
それにお餅がけっこう柔いかんじ。どちらかというと雰囲気で嬉しいお菓子かも、ですね。確かに私もあの紙とかツボ。味的好みでは多分、力餅の底力に軍配かな〜?
でも、赤福食べたらまた嬉しいんですよね、きっと。
東京の一番古い和菓子屋さん(江戸っ子が創業した和菓子屋として)は、多分壷屋さんだったと思います。こちらは江戸時代初期の寛永年間創業です。ここは勝海舟がご贔屓だったことで有名ですね。
初めまして、こんにちは。
TBとコメントありがとうございます。
関西から越後屋若狭までわざわざおいでになるなんて素晴らしい行動力ですね!
生菓子に厳しい京都方面の方でもお気に召して良かった、他人事ながら嬉しいです。
>多分壷屋さんだったと思います
ご指摘ありがとうございます。
そういえばそうですねー。壺屋さんは350年以上ですものね。
実は私が持ってる資料では
「京の中御門家から「じょう」の称号を与えられたが、維新の際、
御用商人の中には江戸から東京に移る時廃業するものが多かった」とあるので
じつに勝手に京都創業かと思ってました。
壺屋さんは飯倉から本郷に引っ越したり、12の支店を統合して本店だけになったりなんで。
なぜかそう解釈してました。思いこみはいけませんね。後ほど追記致します。
店を閉めた後の再開は勝海舟のおかげなので
“今も感謝してる”とご主人が語ったのを読みました。
看板も勝さんの自筆だそうですね。(もちろん新太郎、ではなく。)
ぜひまた東京にもお出で下さい、珍しいものもあるかもしれません。
こんばんは、御元気ですか。
おお。珍しい越後屋若狭のファンですか♪
完全予約のためか皆さん敷居を高く感じるみたいですね。タカシマヤはこの1週間だけでした。初の試みなんです。お店で買った方が好きな数が買えますからお友達に頼めるならラッキーですね。
私ももう一度行こうかなと思ってます。
プレシューズもおいしいのですか。先ほど見たらHPにないのです。和栗のモンブランはイナムラショウゾウで何度か頂きましたが他は知らないのです。ケーキって滅多に食べないので無知なんですよ〜。
秋は豊穣の季節ですものね、今年は不作だそうですが。
最近、東京へは公私とも行く機会がないのですが、非常に詳しい内容なので、次に東京へ行く際の参考にさせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
再訪をありがとうございます。
>こちらこそ差し出がましい
とーんでもないことです。すごく嬉しいです。
歴史や背景など好きで、ついつい書くのですが皆さんが読んで下さってるのかも不安なんです。調べるのは好きでもちょっと孤独な?作業なので詳しい方のご意見などは大大歓迎です。
重さなどちょっと比較するのに面白いな、とシャレのつもりが習慣になり。情趣にかけることこの上ないこんなブログですがこれからもよろしくお願いします。
リンクさせて頂きますので、よろしくお願いします。
リンクいただけるということ、ありがとうございます。私もリンクさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
和菓子は洋菓子と異なり味だけでなく、歴史面や文化的背景が加わるので、それを調べだすと面白いですよね。私も武将と和菓子から入ったので、“御用菓子司”という他の方の和菓子に関するブログにはないようなカテゴリまで設けているほどです(^^;)
すみません、コメントが大変遅れて失礼しました。リンクありがとうございます。
仰るとおり、和菓子には興味深い背景や歴史も一層味わいを深めてくれる上、土地の作物や知恵が生きていてとても合理的で地産地消の素晴らしいお手本という気がします。御用菓子司!すっごく楽しそうなカテゴリーですね。私も携帯書は川端道喜のお話なんですよ〜。またいろいろ教えて下さいね♪