酒種桜あんぱん
酒種コッペパン 側面
四色豆づくし!( 白花豆、金時豆、うぐいす豆、黒豆)
★記事の最後にプレゼントのお知らせあり♪
前回に引き続き「木村屋總本店銀座本店」=
銀座木村家の取材レポートです。
木村屋といえば、酒種あんぱん・・・
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・・がよく知られています。
この"酒種酵母を使ったあんぱん"が「元祖あんぱん」。世界で初めて作られました
そして、日本製パンにおける自家製自然酵母(いわゆる天然酵母)の先がけと言えます。
「酒種」とは米と麹を培地(ベース)に、自然の酵母菌を発酵熟成させたパン専用の発酵種、のこと。
2代目木村英三郎があんぱん創製のときに発明したものです。
酒種パンの特徴として
冷めても柔らかく、日保ちがよい。。
ほのかに日本酒の香りのするしっとりした生地。
発酵力が旺盛で、糖分の多い生地でも膨らむ、などがあります。
(※ぶどうなど果実や小麦がベースの自然酵母は糖分の多い(リッチな)生地が苦手で膨らまない。 したがってリーンなパンが中心に)
木村屋があんぱんを創製するまで、国内でパンは(固くて不味い)と不評でした。
「酒饅頭に想を得た」と言われる、香りの良い柔らかな元祖あんぱんを知って、ようやく人々はパンの美味しさに目覚めたのです。
木村屋の歴史は
明治2年3月28日、東京芝、日陰町に文英堂として創業。銀座に移り、酒種あんぱんを完成させたのが明治7年。
翌、明治8年4月4日、山岡鉄舟のはからいで、向島に(お花見)行幸した明治天皇に献上したのが ・・
「酒種桜あんぱん」。
酒種桜あんぱん
酒種酵母菌を使った生地でこしあんを包み、中央に八重桜の塩漬けを押し込んだものです。
桜を乗せただけでは、焼くと剥がれてしまうのでこの形になったのだそう。
あんぱん献上の詳しくはHP内「あんぱん誕生物語」で。
> さてここからが本番です。
あんぱん創製の中心人物、2代目栄三郎が発明による発酵種が"酒種酵母"。
木村屋は創業から140年近く経ったいまも、この「酒種」という気難しい自家製パン種(自家製酵母)による独自の製法を守っています。
今回は(訊きたくて仕方がなかった)酒種採取の方法も酒種室長(!)八度慎一郎さんに伺ったのですが、これがまあ信じられないくらい手間がかかる。
しかも手間ばかりか運も左右するのです。
酒種黒豆きなこ(10月頃)
現在、使用している酒種は八度さんと数名が8年程前に、筑波山の中腹で岩陰の澄んだ空気のもとで自然の酵母菌を採取したもの。
採取方法をざっと紹介すると、
酒種には米と麹、そして良質の硬水が欠かせないため、まず、筑波山近くの個人宅の井戸水を使って酒米を研ぎます。
ひとつは炊いてご飯にしたもの、ひとつは水を切っただけ。
炊いた酒米飯を皿に盛り、山を登り、前述の筑波山中腹の岩陰に置き、酵母菌が舞い降りるまで数時間待ちます。
・・・・(ねえ、ここまででかなり驚きませんか?ほとんど神がかりと言ってもいいくらいの採取法です。)
・・・
数時間後、酵母が舞い降りたであろうご飯を、小さく握って土瓶にいれ、先ほどの水を切った酒米で埋める。
下山してから再び井戸水を注ぎ、数日をかけて、麹や水を足しながら発酵、熟成させて完成。
(ちなみに麹は神田明神下の天野屋製ほか。)
酒種栗あんぱん
これが、そうやすやすとはいきません。
雑菌が多ければ酸っぱいだけでパンは膨らまない、ときには失敗もあったそうです。
発明時の完全なレシピが残されていないし、苦労は絶えないことでしょう。
そして・・悲しいかな、近年、環境の変化から筑波山での新たな酵母採取は困難になってしまいました。 (ここ何年かも試みたそうですが・・・)
酒種うぐいすあんぱん
ですから。
いまある酒種酵母が銀座本店をはじめ、各直営店に並ぶ酒種パンすべての源であり、 保管は有明本社工場の酒種専用室で、注意深く管理されています。
のです。
酒種小倉あんぱん
イーストを使えば5時間ほどで仕上がるあんぱんも、酒種では30時間ほど要します。
簡単な酒種レシピもあるけれど,木村屋は伝統の製法を守ります。
採取も困難、繊細ですから管理にも神経を使う、あらゆる点で何倍もの手間がかかる。
それでも、木村屋酒種パンならではの唯一無二、代えがたい味わいのために手間を惜しみません。
八度さんのお話では、生物たる自然酵母はなかなか人間の思うように働いてはくれない。
それでも「伝統の味を絶やすわけにいかない」、と研究と模索の日々が続いているそうです。
(後継者が苦労しないよう、データ(数値化)として残したいが、難しいのだそう)
銀座木村家(木村屋總本店銀座本店)七階 職人が手作りする酒種ぱん工場
ちなみに。
酒種室長、なんて肩書きから(ラボで顕微鏡とにらめっこかの研究者?)と思いきや、 じつは前回記事の画像で酒種あんぱん包餡作業中のお一人です。
酒種パンに情熱を注ぐ根っからのパン職人の顔もお持ち。すばらしい。
「銀座木村家」がたんなる大企業本店に留まらず、
"銀座の老舗"らしさを漂わせるのは、手間を厭わずに満足のいく美味しさを、と スタッフの多くが情熱を注いでいるからなのでしょう。
技術職、広報の方、ベテラン販売員さんの様子からあらためてそう感じました。
次回は酒種ジャムパンと酒種ぱんの味わいについて紹介します。
*参考文献:「木村屋總本店百二十年史」「銀座木村家あんパン物語」
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●お店のデータ
木村屋總本店銀座本店 (銀座木村家)
メロンパンだ
★おまけの話★
@前回記事の動物ぱん。取材を終えて一階店舗で探すがない。訊ねるとお待ち頂けるなら7階まで取りに行ってきますが、ご希望の種類は?とベテラン男性販売員の方。希望を伝えると「亀パン1匹とパンダ1匹ですね」。♪♪たい焼きを一尾と数えるワタシはとっても嬉しくなりました。何げないだけに愛情を感じます。
A参考文献の「木村屋總本店百二十年史」。非売品ですが数年前に古書店で入手。それを知った木村家の方たちの驚きよう。じつは銀座本店にも一冊しか残っていないのだそう。ちょっとしたレアものだけど。それ以前に読もうと思ったこと自体にも驚かれたようです。
☆あんころ広報係☆
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和菓子屋さんのあんドーナツ
http://rera-sapporo.com/sweets/rokkatei61.html
酵母の採取は大変手間がかかるようですね。
なんか別のものが舞い降りちゃったりしないのか!? と心配になってみたり。すごいですねーあの酒種にそんな神懸かり的ドラマがあったなんて。
こんどからその様子を思い浮かべながらありがたくいただくことにします。
六花亭がパンを焼いてるんですね、知りませんでした。採取も大変ですが、その後、発酵熟成させることにも熟練した技術(勘どころ?)が要るようです。
休暇でいらしてるのですか、ならばぜひ。採取の話を知っているのといないのとでは、味わいにも差があるのではないでしょうか。
>神懸かり的ドラマ
そればかりか、待っている間に筑波神社に参拝、神社には4代目献納の灯籠があって。もっと高く、男体山頂上には5代目献納の石製賽銭箱のあるお社があるんです。
別なもの・・・、神さま的にってこと?
以前は澄んだ空気だったので清らかな酵母が降り注いだわけですが。それがいまはまさしく別なものが浮遊しちゃってるんでしょうね。
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。