一幸庵製 雪のように白く、赤ちゃんみたいにフワンフワン
今年もいくつかの「はなびら餅」をいただきました。
東京で、評判の高い「一幸庵」の・・・・
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・・・「花びら餅」は求肥でも搗き餅でもなく、
フワンフワンと弾力のある羽二重餅を丸い餅に仕立てています。
ここでいう「羽二重餅」はいわゆる半雪平で、羽二重粉などに卵白を加えたきめ細かく柔らかな餅。
雪のような白さが特徴で、「けがれなき気高さ」をイメージさせます。
一幸庵「花びら餅」はこのフワンフワン度合いと純白感が、抜群に高い。
これまで口にした羽二重餅製のはなびら餅の中でも、最上級フワン。
赤ちゃんのほっぺたみたいな手触りと弾力で、
生まれたての小動物みたいで思わず、「スリスリ」。
頬ずりしたくなるような心地よさです。
むろん、口あたりが好いことも歓迎しますが、ワタシが注目したのはそのかたち。
本来ある「菱葩」に則った構成で、
白い丸餅に小豆で染めた菱餅を重ね、そこへ西京味噌餡とふくさ牛蒡をきちんと2本(ここがポイント)のせています。
いまある「はなびら餅」すべての源である、「御粽司 川端道喜」製「御菱葩」もほぼ同様の構成。
ここで、ワタシなりの備忘録として、菱葩について下に記します。
興味ある方は、読んでみてね。
川端道喜「御菱葩」の試みの餅 ほぼ液状の白味噌餡なので餅を閉じている
菱葩 由来について、
古来、宮中では、鏡餅(正月御居御鏡餅しょうがつおなりおかがみもち)の上に、
葩という薄い丸餅を12枚、そして菱餅が12枚のせていたものを菱葩といいます。
そして丸い「葩」は梅のはなびらに見立て(デフォルメ)た、と言われているのだそう。
牛蒡については、本来、押し鮎だったものが江戸初期に牛蒡に変わったそうです。
鮎は年魚の名が示すように縁起の良い魚で、押し鮎は熟鮨のようなものと想像されます。
牛蒡もまた根が地中深く張ることから縁起ものとされたようです。
さて、牛蒡が二本である理由として。
宮中の正月二日のしきたり「御買物初」の図によると、
三宝の上に12枚の白い葩を並べ、その上に紅い菱餅をのせ、それぞれにまた押し味噌や搗栗などのせ、さらにその全体の上に年魚を二尾を並べています。
つまり、鮎である牛蒡は二本が本来の姿となり得る。
この牛蒡に味噌を塗ったものを葩に菱餅を重ねたうえにのせ、
新年朝儀に奉仕の者などが戴いて持ち帰り(その際、二つ折りにする者もあった)、そのまま、あるいは雑煮にして食したもの、なのだそう。
そして、汁のない包み雑煮が「宮中雑煮」とよばれる、菱葩の源です。
とらやの資料によると『長寿を願う「歯固め」の風習が伝承される過程で生まれた』とあります。
出典がわからないので、参考までにこちら
あらためて、菱葩のクラシックスタイルは
白丸餅に紅い菱餅を重ね、味噌餡と甘く柔らかく煮たふくさ牛蒡※をのせて二つに折りたたんだもの。
しばしば、餅の向き(手前が折山か、合わせ目か)の正否が話題に上るけど、
もともとが平たく重ねた汁なし雑煮なんだから、どっちだっていいわけだ。
折々の裏千家家元のお好みで、変遷があっても不思議はありません。
それから汁なし雑煮の餅ですから、そのまま齧りついて差し支えない。
そう裏千家。
宮中のしきたりから 正月の菓子になったきっかけは
明治3年以降、茶道裏千家・十一代家元玄々斎 が川端道喜に依頼したことが始まります。
東京遷都前まで川端道喜が宮中の御菱葩のほとんどをまかなっており、
幕末に念願の宮中献茶をはたした玄々斎はこれを記念して、天皇の東行後に道喜に頼んだそうです。
これ以降、茶道裏千家初釜用の主菓子として、雑煮は口あたりのよい菓子に変わり、
全国津々浦々、正月になるとさまざまな形態のはなびらも餅が調製されるようになりました。
ここでまったくの思いつきですが、
これまでワタシが頂いたはなびら餅の画像をいくつか列挙してみましょう。
過去数年間に渡るものですので、現在はかわっている場合もあるでしょう。
川端道喜 裏千家初釜用「御菱葩」のための「試みの餅」。餅粉製の白い丸餅、紅い菱餅で牛蒡2本と白味噌餡を包み込んだ 詳細記事
東京「とらや」花びら餅 餅米製の白い餅、小豆色の菱餅、白味噌餡、牛蒡1本
京都「松屋常盤」 衝撃の・・・紅い不定形の餅に小豆あん、牛蒡1本 詳細記事
名古屋「川口屋」羽二重餅の白餅に菱餅はない。紅く染めた西京味噌餡と牛蒡1本
名古屋はこの形が主流のようです 詳細記事
名古屋「川村屋」おなじく羽二重餅の白餅に紅く染めた西京味噌餡と牛蒡1本 詳細記事
名古屋「亀広良」おなじく羽二重餅の白餅に紅く染めた西京味噌餡(または紅餡)と牛蒡1本
お店は近々ご紹介します
千葉「和菓子いろは」宇佐美桂子さんと高根幸子さんの和菓子教室特製 求肥の白丸餅に紅い菱餅、西京味噌白餡、牛蒡1本
京都「老松」餅粉製の白丸餅、紅い菱餅、西京味噌白餡、牛蒡1本
東京「まめ」京都出身、大八木恵子さんの店。半雪平の白丸餅、一部を紅く染めた西京味噌餡、牛蒡1本 詳細記事
東京「菓匠菊家」求肥の四角い白餅に紅い菱餅、西京味噌白餡、牛蒡1本
都内で最初にはなびら餅を調製した(お店の方談)そうな 関連記事
東京「龍昇亭西むら」白い丸餅 紅い餅(形態未確認)、西京味噌白餡、牛蒡1本 関連記事
東京「吉田餅菓子店」あっと驚く、一部を紅く染めた白い丸餅、白味噌餡 牛蒡1本
東京「青柳(笹塚)」 白い丸餅、紅い菱餅、西京味噌白餡 牛蒡1本
自作。求肥の白丸餅、紅い菱餅 西京味噌白餡 牛蒡1本
以上 はなびら餅15タイプ、土地によって傾向が変わるところが興味深く思います。
まだ、書き足りないけれどひとまずこれで区切ります。
最後に、余談だけど・・
ウィキの画像でフォーク添えていたのには驚愕(愕然)しました。
たのむ、クレープじゃないんだから。
◎参考資料
・「和菓子の京都」川端道喜 著
・とらや、川村屋、一幸庵、和菓子いろは 各和菓子店のしおり
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やっぱり正月は昔も今もイベントですね。2月のアジアの旧正月もまた、違う意味で華やかさがありますね。
ソルラルや春節チュンジェ。
和菓子は、舌の上だけで味わうものではないので、その奥に潜む意味合いや、あるいは歴史的背景を知ることが深く楽しむコツだと思います。
どうしてえも求肥はすこし黄色っぽい仕上がりになるけれど、雪平(羽二重餅)はその名のとおり雪みたいで、清々しさをあらわすのにピッタリです。
韓国は旧正月がメインですからねー
今年もとらや製をいただいて満足してしまいました。ほんとはあれこれ食べてみたいのですけど(笑)
虎屋は餅で作っている数少ないお店で、伝統的な菓子に関してはさすが、と感心致します、ワタシも好き。
今年は4店で頂きましたが、一幸庵の牛蒡二本に敬意を払って、書かせていただきましたー。