↑上:「粟餅処 澤屋」ほやほやのあわもち♪店内で
中:上七軒「日栄堂」みたらしだんご 下:澤屋の店先
京都へ神社と資料館のゆかりのお菓子を訪ねた話を続けます。
次なる神社は北野天満宮、その門前菓子と言えば、
茶店でほっかほか〜の出来たて
“きなころりんとあんころりん”のあわ餅で知られた
「粟餅処 澤屋」にて・・・
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名物の一皿をぜひとも頂きたいと、受験シーズンで大賑わいの
天神様前まで参ります。
ところでもしも前回読んで下さった方の中で
“あれ?順序から言って北山方面の目的はどうしたのさ”と思われたら
待て、次号ってことで、まずは天神様を優先、神様ファースト。
↑受験シーズンに賑わう北野天満宮
というわけで、すでに北山エリアでそこそこお腹は満足してますが
持ち帰る、よりやはり出来たて粟餅、を臨場感溢れる茶店でいただこう。
大混雑ピークの境内に恐れを成し、ここでは“粟餅”ファースト。
「粟餅処 澤屋」は天和(1682)年9月創業ですが
実際はそれ以前の寛永15(1638)年の諸国名産ガイド本!「毛吹草」に
北野“茶屋粟餅”の名が見られ、何と、こちらも325年以上の長きに渡り、
せっせと参詣客の虫養いとしてうまい粟餅を作り続けているのです。
「澤屋」のぐっと趣ある店構えに期待も満杯、ワクワクしながら引き戸を開けると
いきなり目の前でご主人と二人が黄色い粟餅をひっきりなしに丸めています。
なんか突然猛打された気分だ。
見渡せば店内は一杯、とは言え出す品は一皿510円の“粟餅”オンリー、
長居する客はいませんから、待たずに居心地良い窓際の席に。
黙って座ればまずお茶が運ばれ、しばし待てば木の塗り皿に盛られた、
出来たてほっかほか〜の五つの粟餅が湯気を立てんばかりに目の前へ♪
まぁるい小豆ボールはこしあん粟餅、ぴろんとなまこ形は甘い黄な粉の安倍川風。
お行儀悪く手でちぎりたいほど、黒文字で切るのももどかしく新鮮で柔らかもっちもち。
あたかも餅米のごとく粘る温かい粟餅に
きな粉の香りもぷうんといっそう高まります。
噛めば粟餅独特のよい香りが鼻に抜けてまた食欲も増します。
出来たての餅の上では実際はあっさりしたこしあんも温度が上がり
甘さが増して元気が出ますね。
勘定の際に、お願いして撮影する間も十二代目のご主人は変わらぬペースで
あんこをきれいに丸めて包餅し続けていました。
(あれ?今思うときなこ餅はどこで作っていたんだろう・・・)
上等の“粟餅”で疲労も回復、ようやく混雑の北野天満宮へ参拝です。
参道には様々な“撫で牛”が寝てるけど
その中でどうにも気になってお詣りしたのが牛ではなく、
小さな『老松神社』。
神社と言っても畳半畳ほどですが、後でその由来を知った時の驚きと言ったら。
さておき、本殿前には相も変わらず受験生家族が鈴を鳴らすために長蛇の列を成していました・・・のではじっこで参拝。
そのまま東門から表へ。
↑やきもちの「天神堂」、神馬堂ではなく
もう一軒の目当ての門前菓子屋さんはすぐそこに見えてます。
じつは天神様の東門にもひっそりと門前のやきもち屋さんがあるのですが
どうやら道行く人々は見落としがちだけど、
その名もストレートな「天神堂」。
上賀茂神社のあの「神馬堂」とは一字違いのこのお店では、店内でお茶と共にいただくことも出来ます。
おそらく多くの参拝客は南門前の賑わいある食べ物屋へ行くのでしょう。
↑店内、お茶も頂き100円では申し訳ない
「天神堂」の店内でも年配のお客がただ一人。そのゆる〜い雰囲気に惹かれ
粟餅を食べたばかりでも思わず“やきもち”の魅力にも負けちまって「座れますか?」
ご主人がお一人で、ポットのお茶を汲みほやほやの“やきもち”を紙に挟んでくれました。
「神馬堂」より薄く柔らかなお餅の中にはあんこがたっぷり、これなら年配の方も食べよいかも。
次のお客がやって来たので
100円玉一個♪払ってとっとと席を空け、さて上七軒の細道を下ります。
上七軒は京都でも最も古い花街であり、今なお黒塀の料亭が点在し
大変情趣深い軒並みが残っています。
↑老松北野店の店構え
そしてこの通りには
あの老舗有職菓子御調進所「老松」が店を構えます。
「老松」といえばこの2月8日に新宿伊勢丹に関東初出店したばかり、
来る前日にも折良く覗く事が出来たけどそちらも随分と充実したものでした。
お店の方にこの北野店独自のお菓子を訊ねると
天神様の“梅の時期だけ”の“御神梅”と
“夏みかん=橘”や金柑などを蜜漬けした
「酒果三宝」は
ごくわずか作る今だけのものだからと薦めて頂き、買い求めました。
(この選択がまた、驚く結果となったのですが)
↑右:稀少な天神様の御神梅を砂糖漬け
店を後に、今出川通りの三叉路まで下り、通りを東へ向かい次なる目当てまで。
今回もっともディープとも言える目当てのおだんご屋さんの、
その店先の風情を目にして、
まずはしびれるほどの満足感に浸りました。
「日栄堂」は訪ねてみると、予想通りの小さなお店。
まったくその歴史やお店の背景は存じ上げなかったけれど、
付近の某料理店のHPの地図上に“だんご屋”さんの名を見つけ、
とにかく気になって気になって、見たくて入りたくて食べてみたくて。
ほのかなマニア根性をおもわず発揮して足を運んだ
“みたらしだんご”のお店です。
店先の佇まいからして、まごうことなく長く地元で親しまれているうまいだんご屋さん。
ガラス引き戸の脇の白いのれんをくぐると近隣の男性客が一人待っており、
見れば30本以上は大口注文した様子です。
「日栄堂」の素敵なガラス棚には一本110円のみたらしだんごオンリー、他にはお菓子がありません。
店の方は余念なく、その焼きたてのとろりとしたお団子を包んでいます。うわ、うまそう〜。
↑左:名入りの京丸うちわが並ぶ 右:これ一本で
順番を待ちながら、年季が入った親しみやすい極上の店内を見渡すと、
芸・舞妓さんの名入り丸団扇がいくつも壁に貼ってあります。
上七軒のきれいどころもおいしいお団子屋さんにはお世話になるのでしょうね。
後で調べると大正時代、80年ほど前からある隠れた人気のおだんご屋さんのようです。
今もなお薪の火でおだんごを蒸し上げるそうで煙突がありました。
この至極の店内でもおだんごは2本からいただけますが、
この日はほっかほかの出来たてを持ち帰りにしました。
ちなみに撮影をお願いして、京都では初めて怪訝な顔をされたけれど、おそらく観光客が滅多に訪れないからでしょう。(単に怪しげだったのか…)
さっそく子供達が遊ぶ公園でペットボトルのお茶とみたらしだんごを頂きます、
本当にほやほやの出来たてだんごは温かく、三刺しの串を持つと大ぶりのだんご自体の重さでふるんと垂れるほど、まるで柔らかで弾力のある子供のほっぺたのようです。
お醤油だれの甘い香りにたまらずぱくり、とひと口、
噛むと米のいい匂いのだんごとしっかり甘くてとろんとしたたれがからみ合い、
美味さに、ぬおー、と劇画のように青空を仰ぎました。←ばかです。
大ぶりのおだんごを食べきるとさすがにお腹一杯、ぶらぶらしながらバス停へ。
名残惜しいが、上七軒に別れを告げて、今出川の『京菓子資料館』へ向かいます。
↑左;京菓子資料館入り口 右:俵屋吉富の銘菓“雲龍”と“白雲龍”
今回の京都行きではこの資料館訪問も目的のひとつ。
棹菓子の“雲龍”などで知られる京菓子店「俵屋吉富」が運営する
「京菓子資料館」は烏丸店に隣接する入場無料の常設展です。
建物の二階には広大ではない静かな室内にいくつかの歴史的史料などが展示され、
落ち着いた雰囲気でゆっくり見学できます。
多くは紙史料で中には川端道喜の保管する、禁裏御用菓子の菓子図帳などの写しも拝見できました。
そして、史料のなかには「菓祖神」=お菓子の神様こと「田道間守(たじまのもり)」像という夏みかん(橘)を抱えた翁の姿がありました。
↑これは“老松”の酒果三宝の橘(夏みかん)と金柑、
こう見えてあっさり、とてもおいしい
妙に興味が惹かれて知らずに撮影しちゃったら、
「館内撮影禁止です」と学芸員さんからお声がかかった。
そういや当然ですね、いやはや失礼しました。
さてこの後、このお菓子の神様はそっと撮らせて下さったのではないか、と
後から勝手な解釈をする理由が出来ました。
この記事の前半で述べた“偶然”(1)北野天満宮の『老松神社』と
(2)菓子舗「老松」で買った「酒果三宝」と、
この(3)「菓祖神 田道間守像」がきれいに結びつくからなのです。
(だらだらと詳しい理由は●おまけの話●に書きました)
↑左:“引千切”はひな祭りの菓子、これはこなし製、
右:立礼でいただけるお薄と俵屋吉富の季節の主菓子、有料。
(頼めば持ち帰り出来る)
こうして京菓子資料館では、
最後に「俵屋吉富」のお薄と主菓子(引千切)を頂き、
御所建礼門の“脇”を目指してまたテクテクと歩き始めました。
すみません、次は北山方面をあっさり書きます。
※昨年の引千切の記事はこちら
※注:京都関係過去記事
・京都訪問その1(神馬堂、他)の記事はこちら
・老松の記事はこちら
・美玉屋の記事はこちら
・川端道喜の記事はこちら
その他の京都菓子関係の記事は
中村軒やら紫野源水やら宝玉堂の稲荷面やら京都総特集1やら京都総特集2など
●(とても長い)おまけの話●
余談ですが、書きたい!(ので読み飛ばして結構ですが)不思議な偶然とは
じつはお店の「老松」で買った“酒果三宝”の包み紙(右の画像)から判ったんだけど、
まず、(1)北野天満宮境内で呼ばれたようにお詣りした小さな『老松神社』が、つまりは京都資料館で思わず姿を撮影しちゃった(3)のお菓子の神様「田道間守たじまのもり」でもあり
(2)の老松でやっと選んだ“酒果三宝”に夏みかんを使っているの理由は(3)の「菓祖神 田道間守像」(=老松のご先祖さんの神)、が中国から持ち帰ったのが夏みかん(詳細はリンク先の“山人爽果”の項を読んでね)だから。
簡単に言うと「たじまのもり」神様が3つの別な場所でそれぞれに関係していた。
夏みかん(橘)は日本の御菓子の起源であることから「老松」では由縁あるものとしてこの限られた特別な菓子にも用いているようです。
自慢するけどちゃあんとそれを選んで食べた訳です。
ややこしいので説明しにくいけど、とにかく御菓子(夏みかん)の神様、
「たじまのもり」おじいちゃんが見守ってくれてることにしました。
しかもこじつけだけど、我が家にある唯一の果樹は“夏みかん=橘なんで。(右の画像は自家製夏みかんの砂糖煮)
意味がなくても、御菓子の神様のお導きと思いたいでは、あーりませんか。
どういうお導きだかわからんけど、ちょいと本人は良い感じがしています。
●お店と菓子のデータ
★粟餅所 澤屋
住所:京都府京都市上京区今小路通御前西入紙屋川町838-7
(北野天満宮前西入南側)
定休: 時間 :00 - :00
「粟餅」一皿510円、持ち帰り可(二人前より)
★天神堂「やきもち」一個100円 店内お茶付き、持ち帰りも可
★老松 北野店
「酒果三宝」1800円 梅園時期限定、北野店のみ販売
北野天満宮の御神梅を数年間熟成、きんかん(熟成した金柑酒の実)、萩の夏みかん、
の三種を砂糖漬けした果実菓子。
漬けした果実菓子
★日栄堂
「みたらしだんご」一本110円 (店内では一皿二本から)
◎下段にお店の地図
※
★京菓子資料館
|
ラベル:上七軒
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澤屋は粟餅はもちろんのこと、粗挽きのきな粉がわたしはたまらなく好きなのです。わたしが行ったときは4人で黙々と餅を丸めていました。
みたらしだんごもやきもちも、そしてちょっとあこがれ俵屋吉富の引千切も、またしてもジェラシーだわっ。
そ〜、粟餅のきなこ♪おいしいですね。
あんこは食べ続けてたので全部きなこにして欲しいくらいでした。
あのねー入った時は3〜4人で丸めていた気がするけど、撮影時に二人だったのです。それもあり、きな粉餅をどこで作っていたのかな、と思い出せないのが気がかりで。再確認しに行こうかな(笑)みたらしは出来たても良いけど冷めちゃったのがすごく好きでした。妬いてもらうとまた自慢してしまいます。引千切からはや一年。
そういうときは、いろんな素敵なことが次から次へと・・・
旅の続き、楽しみにしています。
ありがとうございます。わかりにくい説明の勝手な解釈読んで下さったのですね〜。
申し訳ない気がしますが、本人はうきうきなのでお許しくださいませ〜。
もう少し続きますのでよかったらお付き合いください。
参りました〜(笑)
澤屋のあんころりんはまさに「あんころりん♪」というHNそのものと云った感じですね!ほかほか「きなころりん」も美味しそう♪
あんころりんさん特製の夏みかんピールもいつ見ても美味しそうです〜☆
お久しぶりです、嬉しいですね〜。
こちらこそ生栗さんの和洋豊富な画像に感嘆しています。たしか京都も一昨年の記事に書いてましたものね
澤屋さんの粟餅はあのお店ならでは本当に美味しい〜。
たくさん良いお店があるので再訪したい気持が高まります。栗さんが行けなかったお店はぜひ画像などで楽しんで下さいね♪
こんばんは。
いやさすがに2本は多いなと思って持ち帰りにしたのと、包装紙に惹かれたのもあり公園にていただきました。そしてさすがに上生菓子は持ち帰り、夜遅くにお家でいただきました。
夏みかんピールをおぼえていて下さるなんて、嬉しいです、さすがはfish&chipsさん。
昨年は実がなりませんでした、今年も無理かな〜。
しかも、あつあつできたてとは、よろしゅうございます。
黄な粉は花粉症にはきつそうですが、
この写真見ると食べたくなります。
やきもちも粒でおいしそう。
オンリーの店というのも
自信があるから出来るんですね。
しげたというところのひっちぎりを
買いました。もうすぐ雛祭りですね。
私も花粉症が治まったら公園デビューかな。
ぬおーっ!!
いつも丁寧でうれしいコメントありがとうございます。
出来たてって現地ならではの嬉しさも手伝ってすごく楽しいです。
花粉症ってきなこもアウトなんですか?可哀想〜。これはしっとりコクがあるから大丈夫?
やきもちも素朴なかんじでおじさんが親切で和めます。このおだんご屋さんがすごく私はお薦めします。今度は中で食べたい、でも公園で食べるのもまた格別です、本当にアレルギーって大変ですね、お大事にねー。
zoomaniaさん
またまた伝道師なんて、大げさでござんすよ。
でも家の夏みかんが一番好きな位でそう思うと
因縁というか多生の縁というか、
何だかうれしい巡り合わせをじわじわ感じました。
でもこの面倒な説明を読んで下さって申し訳ないです、感謝感激。