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「和菓子wagasi」−東京のお菓子・菓子パンを歩く

2013年03月23日

蒲田/和菓子処 清野〜かすてぃら、パォン・デ・ロー、どらやき、桜餅

和菓子wagasi−東京のお菓子・菓子パンを歩く
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パォン・デ・ロー
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長崎かすてぃら、惚れた
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餅米を使ったすばらしい「特製さくら餅」! おだんご、草餅など朝生菓子もナイス

紹介しよう、と思いつつ一年半が経ってしまった。

前回予告通り
蒲田の小さなお店、「和菓子処 清野」・・


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小さな画像はクリック拡大

・・について書きます。

3月21日の記事に掲載した「パォン・デ・ローPao de lo」。
ポルトガル式の焼菓子ですが、
なぜまた蒲田の小じんまりした和菓子店で焼いているのか。

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その前に「和菓子処 清野」というお店のお話を少し。
昭和42(1967)年開業、46年目の現在、
清野の菓子づくりは初代の女将と娘で女性職人の中田春美さんが担っています。
初代であるお父様は腕利きのカステラ職人として知られており
故郷長崎から上京、老舗菓子舗の麻布「青野」でカステラ調製を任されていました。
そちらで数年間カステラを焼きながら和菓子づくりの腕も磨き、そして独立。
お店は蒲田の評判店となり、カステラの人気がとりわけ高かったそうです。

お父上の急逝後、和菓子作りに関してはシロウト同然だった中田さんですが、女将と共に店を支えることになりました。

・・・あのー、こう書くと何だか"汗と涙の細腕繁盛記"みたいですけど。
実際の中田さんは普段はライダースジャケットを着こなすカッコイイ女性(母だし)で、お話の端々に意識の高さ、センスの良さを感じさせます・・

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クリック拡大。もれなく付いてくるパォン・デ・ローの能書き、必読です

でもって。ここからがフツーと異なるところ。
当初は先代の味はムリとカステラ作りは諦めていたのだそう。
しかし(先代カステラの味を復活させるべく)なんと研究のためポルトガル(!)へ渡航。

南蛮菓子のルーツがスペイン、ポルトガルというのは知られた話ですけど
現在のポルトガルに日本のカステラ風菓子が日常的に存在するわけでなく
わざわざカステラ研究で渡航する(カステラ老舗以外の)和菓子職人は皆無と想像します。
・・・ほんとに何考えてんだか(失礼)。

ポルトガルでは松翁軒でカステラ作りを修行したことでも知られる
菓子職人パウロ・デュアルテ氏夫妻と友好関係を結び技術研修と情報交換に努めました。
そして帰国後も研鑽を積み、ついに長崎かすてらのルーツと言われる「パォン・デ・ローPao de lo」の調製を成功させたのです。怖いもの知らずの成せる技。

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いわゆる半熟カステ-ラとはひと味もふた味もちがう

国内でパォン・デ・ローを作る店は数軒ありますが
清野が調製するのは芯が半熟卵のようにトロっトロ〜でふんわり柔らかなポルトガル式。
卵の風味がハンパでなく濃厚な大人の味わい、たんなるフワフワ焼菓子と異なります。
またバターなど油脂類やベーキングパウダー等の膨張剤、香料なども一切使わずに素材の力を存分に引き出した点も、(鶏卵素麺やカスドースなど)卵の醍醐味を生かした和菓子に共通するものを感じます。

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それから
ポルトガルではこのトロトロ加減を好みの固さに注文できるそうですが
清野はその点もポルトガル式を実行しています。
「できるだけ生っぽくトロトロに」とか「やや固め八分くらいに焼いて」など好みに応じた焼き加減で調製してもらえます。
たとえば・・・これ↓はやや固め

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これはトロトロ〜↓
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ハード系パンが大好きという中田さん。
材料の選び方も一般的な和菓子職人さんとは視点が異なります。
「岩手産平飼い有精卵、砂糖、北海道産小麦粉、国産無農薬レモン表皮」。
パォン・デ・ローの原材料ですが、まるで本格パン店の材料表示のよう。

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昼過ぎに焼きあがる「昔たまごのどらやき」。焼きたてほかほかは感涙もの

記憶ではカステラやどらやき、温泉まんじゅう(!)にまで国産(北海道)小麦粉を使っているのは清野だけ。
おなじように卵はすべて岩手産平飼い有精卵を使っています。

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「蒲田温泉まんじゅう」ただの温泉まんじゅうと思ったら大間違い。黒糖とこしあんを練り込んだ口どけの好い皮に品の良いこしあんを包んだ

そして厨房。これがシブくて好い。
かすていらやパォン・デ・ローを焼くのは初代から続く旧式のオーブン。
取扱いにかなり苦労されているようですが、これも清野の味に貢献しているような気がします。
パォン・デ・ロー」は1個ずつ手づくり、旧式オーブンで焼くため量産は適わず一度に焼けるのは10台程度なので注文製、鮮度を鑑みた要予約の品です。

もうひとつ
ワタシがパォン・デ・ロー以上に好きなのが「長崎かすてぃら」。
清野のお菓子にのめり込んだのもこのかすていらに出会ってから。
はじめて口にしたときの感激といったらありません。
底にはザラメ(白双糖)がたっぷり、生地がややみっちりして風味が抜群によかった。

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長崎かすてぃら、底のザラメ♪

底に追加ザラメを敷いているのですが、じつはご本人が(ザラメを)好きでないので、逆に気前よくふんだんに混ぜることに抵抗がないのだそう。
清野を代表するお菓子ですが、ただし現在は製造をおやすみ中。
昨年末に手首を骨折されたとのことで、重量のかかるカステラ一台分を思うように取り扱うのが難しいのだそう。一日でも早く完治されることを祈ります(←食欲寄りのお願い)。
※つい先ほど右腕復活宣言されました、まもなく再開されるでしょう(3月23日追記)

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根昆布だんご、草餅(こしあん)、桜餅(粒あん)

ここまで書いたので、季節の朝生菓子↑についても少し。
これまた感激したのは「特製さくら餅」、なんと道明寺粉でなく餅米製(!)。
新潟産こがね餅米を炊きあげて、しかも中は瑞々しい粒あんなのだ。

ワタシはこれまで道明寺粉のにおいがどうも気になって、こと桜餅に関しては焼皮、と思っていました。
なので清野でも内心(東京なのに道明寺だけー)とがっかりしたのですが
口に入れてびっくり。え、なんでこんなにおいしいの〜〜。

訊いてみたところ「あれ餅米なんですよー。それから道明寺粉も自分で作ってるんです」だと。
甘さを控え小豆の粒をいかした粒あんとめちゃめちゃ相性がよい。
やはり既成の道明寺粉のにおいが気になり、ならば餅米でつくっちゃおうと。恐るべし清野。

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長年感じていた道明寺粉問題(?)に関して同じ印象を持つ和菓子職人さんの存在、ほーんと嬉しかったですねえ。

根昆布でだしをとった焼だんご「根昆布だんご」など上新粉を使った朝生菓子も歯ごたえがよくておいしい。
Facebookやツイッターでも毎日のフレッシュなお菓子の情報を発信する中田さん。
おいしそうな写真を眺めながら、ああ、蒲田へ行きたいと日々思うのでした。
あ、そうだ。
清野の「あんがとーしょこら」は、初めておいしいと思った「チョコレートを使った和菓子」です。

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和菓子処清野
(※最初の投稿で中田春美さんのお名前を誤って掲載しました、訂正してお詫びします。)
パォン・デ・ロー(小サイズ)
昔たまごのどらやき
長崎かすてぃらハーフサイズ有
特製さくら餅
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posted by あんころりん at 13:16| 東京 ☀| Comment(14) | TrackBack(0) | 港区&大田区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こちらのパン・デ・ローは前から知ってはいましたが、これだけ掘り下げた話は初めてです。

長崎にスペイン菓子店のサン・オノフレというお店がありますが、フランス修行に行く前に立ち寄ったスペインに魅せられてスペインとフランスで修行後に長崎で「スペイン菓子」のお店を開いたそうです。
http://san-onofre.com/owner.html

スペイン菓子のお店ですらそうなのですから「カステラ」という目的とはいえあまりスペイン・ポルトガルのお菓子を作る人がいない日本でポルトガルへのストレートな中田さんの思いというのは大したものだと思います。
Posted by 笹団子 at 2013年03月23日 22:19
蒲田の清野では、小振りですが、きめ細かな厚皮で潰餡を包む黒豆大福が美味しいですね。
月曜とい金曜にしか販売しないため、手に入れにくいかもしれまえんが、機会があれば試して下さい。

京急蒲田駅近くには、吉野屋と云う値段が安い割りに美味しい豆大福を販売しているお店があるので、機会があればこちらも試して下さい。
Posted by 宮 at 2013年03月23日 22:25
笹団子さん
さすが!すでに召し上がってるとは。いかがでしたか。
普段は飄々としている中田さんですが、あまりにストレートな発想に驚かされました。スペイン菓子店、とても興味を惹かれます。情報ありがとうございます。
Posted by あんころりん at 2013年03月25日 12:05
なんて興味深いお菓子&お話の数々なのでしょう!!
最近よく見かける「半熟カステラ」はまったく斜め目線だったので、清野の記事も最初は斜めから見ていたことを正直に告白してお詫び申し上げますよ。
ところで、特製桜餅をみて出町ふたばの桜餅を思い出しました。もしかしてあれも道明寺ではなかったのかしらん…と思ってしまう。
わたしは道明寺好きですけど、糯米桜餅も食べてみたいですー。
Posted by kozue at 2013年03月25日 16:49
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Posted by 藤田あすみ at 2013年03月25日 17:08
宮さん
やはり情報通でらっしゃいますね、さっすが〜。
黒豆大福、昨年と今年一度ずつ頂きましたが写真を探すのをサボってしまいました、コメントにいれていただき嬉しいです。ホントおいしいお餅ですよね。

それから吉野屋は豆大福といくつかの朝生菓子、昨年に一度いただいたことがあります。形はワイルドだけど好きです〜。ただ奥にいらっしゃると呼んでもなかなか聞こえないようで・・(笑)
キネマ通りのお店はどこも好みです♪
Posted by あんころりん at 2013年03月26日 12:31
こんにちは♪
カステラも桜餅も馴染み深いお菓子ですが・・・
ぱおんでろ〜???
初めて聞きました!!
京都をはなれ、帰ってきた先は蒲田にとっても近いんです。嬉しい偶然ヽ(´▽`)/
自転車で行ってみますね〜
Posted by coo at 2013年03月26日 13:59
実は「お店の存在は知っていた」というだけのことでまだいただいたことはありません。
お取り寄せは待ちそうだし予約して持ち帰るとしたら梅雨前がよさそうですね。

説明不足ですいませんでした。
Posted by 笹団子 at 2013年03月26日 19:45
kozueさん
半熟かすてら、ワタシも数年前にヨソサマのを頂いたときは「へっ」って印象でしたから無理もない。清野の初代はもともと洋菓子がお得意で。中田さんは子供の頃に父上が焼くケーキ類が大好きだったそうですからそんな布石もありパォン・デ・ローや他のポルトガル焼菓子を熱心に焼かれるのかもしれません。
長崎かすてぃらも焼く日も近いようですが、まずので国産小麦粉使用の温泉まんじゅうなどいかが。
出町ふたばの桜餅、想像するに餅米であってほしい&ワタシも食べてみたい!
Posted by あんころりん at 2013年03月27日 01:12
藤田あすみさま
お誘いありがとうございます。さっそく今回の記事を登録してみました。
Posted by あんころりん at 2013年03月27日 01:15
cooさん
お帰りなさーい。蒲田って和菓子店があるという印象が薄いようですがいおいろ楽しい店、良い店もあります。清野はなかでもオススメ。パォン・デ・ロー、実際に発音するのは「ぱんでろー」ってかんじです。機会があればぜひ
Posted by あんころりん at 2013年03月27日 01:19
笹団子さん
わざわざご丁寧におそれいります。ワタシも早とちりでした。パォン・デ・ローは基本的に予約が必要ですのでご注意くださいね。
Posted by あんころりん at 2013年03月27日 01:20
コメント遅くなりました!!
なるほど和菓子屋さんなのにパォン・デ・ローの様な洋菓子を作っているのは先代がカステラの職人さんだったところからきているのですね〜。
フランスやパリにお菓子の修行に行くというのはよく聞きますがポルトガルに修行、しかも女性一人で行くなんて頼もしい女性ですね!現在ライダーズジャケット着ているというのが頷けます(^.^)
半熟カステラのといえば「ハレノヒ」がその火付け役ですがこちらの店は流行に関係無くこんな素敵なお菓子を作ってたのですね〜(^o^)
材料にも拘っているパォン・デ・ロー、ぜひ食べてみたいです!!
Posted by RoseMary at 2013年03月29日 17:00
RoseMaryさん
いつもご丁寧にありがとうございます。
ハレノヒ、そーいえばワタシも一度トライしました。
>女性一人
これがなんと女将とご一緒で女性二人でいらしたとか。よけいにオドロキましたがいまもポルトガルの職人ご夫妻とは情報交換を怠ってないようです。カステラは材料がシンプルなだけに技術が問われるところ。パォン・デ・ローも同じなんでしょうね。機会があればぜひ。
Posted by あんころりん at 2013年03月29日 17:19
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