君寄
ひろ柿
若紫
広島市内の「風雅堂」といえば
良質の柿を使った半生菓子"ひろ柿"がよく知られていますが、
訪れてみて、茶席用の生菓子・干菓子を得意とする・・・・
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・・・菓子舗だったのは発見でした。
広島に家元のある「上田宗箇流」の茶席菓子など担っており
ほかにはないようなすばらしい生菓子も調整しているのです。
やはり自分の足で廻るといろいろウレシイ予想外があります。
広島市内の菓子処で全国的知名度が高いのは平安堂梅坪でしょうか。
地元ならではの上菓子の店というと、おそらくこの「風雅堂」とそしてもうひとつは「多津瀬」ではないかと推測します。
(多津瀬について詳しくはまた後日触れるとして)
どちらのお店も、自家製菓子についての説明と表示が丁寧にされていることにいたく感心、感激しました。
煉切の野ばらは"御前あん"(漉餡)、あやめ饅は薯蕷饅頭製
風雅堂では上生菓子、干菓子いずれも、まず菓銘があり、そして菓子の種類と餡の種類が表示されています。
たとえば5月頃の上生菓子なら「若紫」外郎製胡麻餡仕込み、「あやめ饅」薯蕷饅頭製小豆御前餡仕込み、とあり干菓子も「胡蝶」黒胡麻入り押物、と手書き文字で書かれています。(上の画像参照)
かしわ餅の"槲"なんて初めて見る文字だけど、こうゆうの知るって楽しいし。
槲餅 しろとよもぎ 槲が正式な書き方のようです
店内に陳列された行器など。
読み手=客がすぐに理解できなくても、手を抜かずにこういった説明を続けるのはある種の啓蒙ですから、大切なことでしょう。
そうして買って気に入れば、もしくは書かれていることにより興味をひいて、少しずつ理解を深めていくのです。ワタシもそのひとりです。
薯蕷きんとんの"藤浪"は粒あん
少々話がそれますが、
こういったことをなぜか(都内の)和菓子店の多くは「(客は)どうせわからないんだから」表示も怠り、また訊ねてもお座なりな説明しか返ってこないことがあまりにも多すぎる。
知りたいから訊くわけで、薯蕷饅頭だって、葛だってきちんと説明されば誰でも理解できる。まったく錦玉を「ゼリーです」とか・・どうよ。
ホントに和菓子の行末を心配するなら、お店が地道に啓蒙しなくてどうするのだ。
この点は旬の洋菓子店を見習ってほしいところ・・・
と、二つの店の好印象から、あらぬ方向へ転がりましたが、それはさておき。
そんな矜持ある「御茶席菓子所 風雅堂」の通年の生菓子が"君寄"です。
卵を使った蒸菓子で、またたく間にひとつ頂いてしまうほどやさしい口ほどけ。
風味は濃いのい軽やかで、卵特有のにおいを感じさせず、黄味時雨とも浮島とも異なるお菓子です。
そして銘からも推察できるように献上菓だそうです。
明治時代、広島に陸軍関係の施設があった頃、明治天皇滞在の折に二度献上されたのだそう。
風雅堂が現在地に開業したのは戦後まもなくの昭和22年なので、献上したのは初代が修行していた「風月堂」という老舗。
風月堂は原爆で焼失してしまいましたが
風の一字をもらって店を開いた初代は、伝承の「君寄」と「ひろ柿」を守り、いまに継っているということです。
買ってすぐに(チャリ移動して)広島城の庭↑を眺めながら味見。「ひと口のつもり」がとまらない。
黄身餡を好まないワタシには滅多にないことです。
浮島の一種かしらと思ったんですけど訊けば、粉類をまったく使っていないという。
おそらくはたっぷりの卵と、白餡とひょっとしたらつくね芋かなあ、でも山芋の香りはしなかったような。
何にせよ、ワンアンドオンリーのお味。
君寄についてはプロも認めるところ(他店を褒める懐の深さ♪)ですし、ワタシ的には卵系生菓子のベストスリーに数えます。
黒文字による断面
外郎製の"若紫"も美しく、とりわけ黒胡麻あんの風味がとても好かった。
既成の練りゴマを使えばカンタンですが、丹念にすりこぎで黒胡麻を摺ることで風味は格段にあがります。
摺るだけで2時間かかるそうですが、味には変えられないと仰っていました。
キッチュな彩りの胡蝶もまた、押物に珍しく黒胡麻が効いています。
つくりたてを試食させて頂いたところ、口ほどけ好くホワっと広がる胡麻の風味。
東京に帰り担当講座と茶の稽古に提供したところ好評でした。
ひろ柿を最後に食べたのは数年前ですが、干柿を使った菓子のなかでも秀逸でした。
西条柿などの干柿をジャムにして用いた自然な甘さと歯切れのよい食感が洗練されていて、短冊形のこの薄さも好ましい。。
ここのところ都内で見かけないので、買ってくればよかったなーといまさら後悔しています。
生菓子は冷凍で取り寄せることも可能だそうですので
いずれひろ柿共々お願いしましょう。
●風雅堂
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◎Facebook(あんころりん)
☆広報係☆
★講座「東京のお菓子を歩く」 問い合わせは事業本部まで。詳細は
こんな感じ
★読売文化センター自由が丘:土曜講座「和菓子を楽しむ」
詳細はこちら
★書籍『東京 いとしの和菓子 あんころりんのおやつめぐり』
カラー写真と“東京の和菓子屋、パン屋”満載。地図付き。
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因みに、「みよしの」は、あんころりんさんが訪問した「胡桃屋」の直ぐ近くにありました。
風雅堂の粽については、”砂糖醤油かわさび醤油で食べるよう書かれている”と昨年書き込みをさせて頂きました。"槲"の文字からお分かりのように、こだわりを持って菓子を作っている姿勢が窺われます。生菓子だけでなく、大徳寺納豆入り落雁「安閑」も口溶けが良く、大変美味しいので、次回はお試し下さい。
多津瀬さんを紹介した現地サイトに広島の和菓子屋さんの客さんへの丁寧な説明が画像で投稿されています。
http://hiroshima.o-map.com/facility.php?f_cd=0059
遠く離れた東京ではなかなか情報が入りにくい広島の和菓子店ですが、行ってみると面白そうですね。
貴重な情報をありがとうございます。
みよしのはワタシが市内菓子店を巡った際は休業日だったようで、残念でした。だんごなどの朝生菓子の店と勝手に想像していたのですが、生菓子が得意だったのですね〜、未練が増します。〈代わりに?河内ベーカリを訪れて収穫を得ました)。ちまき!
そうでした、忘れてた〜。安閑も惹かれましたがお菓子買いすぎてたのでスルー。これまた悔やまれます。
本家の風月堂は焼失してしまったのですが、いうなれば別家に技術だけが残ったということになりますね。
多津瀬もよいお菓子屋さんですので、次の機会に紹介したいと思います。
で、お菓子の美しさに見とれながら・・・次のお店も期待してます!
ものすごくお久しぶりです
20年くらい前に広島の風雅堂でゴマ餡の上生菓子を食べて、すごくおいしかったのを、ひょんなことから思い出して検索してみたら、この記事にたどりつきました。
ひさしぶりにあのお菓子の画像がみれて、うれしいです。
ゴマ餡の上生って珍しいですよね。
風雅堂では秋にもう一種、ゴマ餡の上生を作っているらしいのですが、ご存知ですか?
ご無沙汰してます、コメントありがとうございます!
お返事が遅れてすみません。
風雅堂のごま餡の風味の良さは深く印象に残りました。
冬〜新春のお菓子の写真を見せていただきましたが、紫の雪、というごま餡のきんとんがありました。おそらく四季折々にごま餡をつくるのでしょうね。