友千鳥 さらに群れる
とらやの友千鳥
越後屋若狭 うぐいす餅
"友千鳥"とは群れ集まる、あるいは群れてとぶ千鳥のことで冬の季語に・・・・
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・・・なります。
"千鳥"は古くから文学に登場する動物のひとつであり、千鳥饅頭なんてメジャーなお菓子もあるけれど、千鳥がどんな鳥か知っている人は多くないのではなかろか。
ところが。
湘南に住んでみると、冬の季語という割りに年中見かけるのだ、千鳥。
日課として江の島から鵠沼の海岸を犬連れで歩くのですが、
おもに夕暮れ時、たびたび波打ち際を「ひょひょひょひょひょ・・・」と集団で移動するの小さな可愛らしい鳥に出会うのです。
これが千鳥、群れてる彼らこそまさに"友千鳥"というわけ。
狩猟本能を呼び覚まされた"連れ"が、波打ち際に突進してっても、わりと冷静にひょひょひょひょひょ・・・と移動を続けながら捕食に余念のない、そんな千鳥さん。
この2月は奇しくも「越後屋若狭」と「とらや」(こちらは期間限定のお得意様向けで一般販売はありませんが)がそれぞれの「友千鳥」をこしらえていたのでした。
越後屋若狭の創業は1740年頃ですから、どちらも江戸時代からすでに盛業だった菓子屋です。
ほかにはどんな友千鳥があるかしらと探してみたところ、この菓銘の生菓子は思いのほか少なかった、というかこのふたつしか見つからなかった。
そんなレアものを一度に手にする機会はそうあるものではないので、両方を戴いてみました。
実際にいただいみて
同じ菓銘でこんなにも異なるイメージ、味わいになるのね〜〜、と
あらためて和菓子の懐の深さと醍醐味を思いました。
まずは
越後屋若狭の友千鳥。
淡く、柔らかな色合いが多い越後屋若狭には珍しく、薄小豆の練りきりに中も小豆こし餡。
小判型に丸めて、ふたつ載せた蜜漬けの小豆で友千鳥をあらわしています。訊かなかったけれど"薄小豆"というのは渋きりをしっかりした藤色の小豆こしあんってことでしょうか。
色彩を重んじることの多い練りきりって主には白こしあんベースですが、小豆練りきりのほうが豆の風味が佳くてワタシは好き。口に入れるとなめらかな漉し餡と違和感なく溶けていき、とてもデリケートな味わい。
ちょい渋めの意匠も存在感があって華やかな色合いのお菓子より、ワタシには好ましい。
越後屋若狭ならではの美しい仕上がりで美味しい練りきりです。
いっぽう
とらやの友千鳥はこちら。
友千鳥 白小豆の蒸羊羹製
ベースになるのは白小豆の蒸羊羹!
そこに小豆を散らして、群れ飛ぶ千鳥を表しています。
昨年からこの2月にかけて、元禄時代のお菓子の再現を試みており、そのひとつになりますが、尾形光琳もこの意匠を好んだようでパトロンの中村内蔵助に贈った記録が残っているのだそう。そのエピソードにちなんで、2015年に開催された琳派四百年記念祭 限定商品としてとらやから販売されたので、そのときにこのお菓子を召しあがった方がいるかもしれません。
とらやに残る菓子図帖「御菓子之書圖」によれば、元禄時代はこの意匠でそぼろ状の餡に小豆を混ぜて蒸したものだったようです。
とらやは元禄時代のお菓子3種を再現(店頭販売なし)
とらやの菓子のなかでも蒸羊羹製はあまり多くなく、一般販売では栗蒸し羊羹と"寒中の華"くらいしか思い浮かびません。そのほかに、くるみ入りの"朧月"や"しののめ""白羊羹"を会員向けに期間限定で作っていたくらいかな。
今回も一般販売のないお菓子でしたが。
甘さを抑えた白小豆の蒸羊羹はむっちりとした口あたり。これまたあっさりとした小豆粒とのバランスが好く、とらやの生菓子のなかでもさっぱりとおやつ感覚でいただけるお菓子でした。
素材の色だけで仕上げた、シックな意匠もすてき。
元禄のお菓子の再現はとっても楽しい試みでした。またやってほしいなあ。
次の試みが派手な色づかいになりそうな気がして・・・それは避けてほしいけれど。
さて
「越後屋若狭」に戻りますが
2月の越後屋若狭はほかに、薯蕷煉切の"羽衣"とうぐいす餅もこしらえています。
越後屋若狭:紅ぼかしの上用(薯蕷)煉切を椿(羽衣)のように仕上げた"羽衣"。
越後屋若狭:ごく薄い求肥でこしあんを包み、大豆きなこで仕上げたうぐいす餅
またとらやに話を戻します(ややこしい)が、
とらやの元禄時代のお菓子(2月)はほかに・・
花橘 元禄(外郎製に白こしあん入)
とらや
とらやの外郎製、じつを言うとあまり好きでなかったんですが、しっかりとした口あたりの花橘は圧倒的に好ましいものでした。やはり寒ーい季節にいただくほうが美味しい。
花橘といえば 非時香果、田道間守(たじまもり)が命をかけて、大陸から持ち帰った菓子のルーツです。※以前の田道間守の記事→*と*
もうひとつは
新紅梅(薯蕷製に御膳餡入)
とらや
花橘、新紅梅ともに一般販売はありません、ごめんなさい。
越後屋若狭は完全予約制です。購入の際は予約を。
・「越後屋若狭」 墨田区千歳1の8の4 日曜、祝日休み ブログ内参考→※
友千鳥:薄小豆練りきりに小豆こしあん 380円+税
・とらや
友千鳥:蒸羊羹製486円(砂糖、白小豆、小麦粉、小豆、葛粉)※店頭販売はありません
☆おまけの話☆
いきなり故障していたiPhoneカメラがこれまたいきなり復活!いや〜これが嬉しいのなんのって。壊れたのも原因不明ですが、復活も突然。友人宅の出産祝いに友人宅を訪れた際に気がついたので、おそらく新しい生命のおかげだろう、ということにしておきます。年明けからネガティブな話が続いてたけど、節分で軌道修正できたのかも。何にせよとっても嬉しいのだ。今年は「和菓子の会」を発足させたいと考えています。と言っても具体的なことは何も決めていませんが。興味のある方はご一報を。
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鶯餅好きです。こし餡ってところが好きです。
でも、青きな粉じゃないタイプって初めてみました。わらび餅かと思っちゃいました。
越後屋若狭の友千鳥はこしあんでとっても上品な感じですね〜。見た目もかわいい!
最近、和菓子から遠のいているのですが、あんころりんさんのブログは毎回拝見しています!見ると、うわ〜美味しそう♪ってなるんですがね・・・。
で、「和菓子の会」発足ですか〜!どんなことをするんでしょう?
遠方でも良ければ、参加したいな〜♪
コメントありがとうございます!こちらはとても薄い求肥で包まれた口どけのよいうぐいす餅。きな粉の風味の良さが際立っていました。確かに見えますね〜わらび餅。実際はもう少し淡い色だったのに画像は深煎りきなこみたいで。(笑)
見た目通りの品の良さで品の良さパワー(笑)で感動してしまいました。
和菓子離れですね〜、たまにあんこ食べたくなりません?
実際の集まりは都内か湘南を考えてますけど、遠方の方でももちろん入会オッケーよ。ぜひ奮ってご参加を。
こちらのブログを拝読しはじめたきっかけは忘れてしまいましたが、更新のたびに楽しませていただいています。ありがとうございます。
和菓子の会、やや遠方のため、実際に参加させていただくのは難しいかもしれませんが、とても興味があります。
続報、楽しみにしております!
こんにちは。
いつもお読みくださってありがとうございます!
和菓子の会に興味を持っていただき光栄です。
和菓子の会は年3回程度の集まりを考えていますが、毎回のテーマについてのお知らせや集まりの結果報告などもできるようにしたいと思います。
また、決まったことからご報告しますので、ご参加いただければ幸甚です。
和菓子の会、とても興味があります。都合がつけばぜひ参加したいと思います。よろしくおねがいします。
そこで我慢できるアナタはすごい!ワタシなら缶詰でも食べてしまいますわよ〜
ありがとうございます!ぜひご参加ください!!!・・・ただまだ何も決めていないので先になると思いますが。
一般販売品は各店で展開するわけですから量産するのが難しいとかいろいろあるのだと思います。
センス的にも、ワタシにとっては今年はほんとに渋くてよかったのだけれど。、ただ会員の中には地味すぎてがっかりっていう人もいらっしゃるので、やはりメジャー展開は難しいのでしょう
和菓子の会、ぜひよろしく!知恵を貸してね〜
確かに「友千鳥」って他に聞かないですね。
そして和菓子の会、ワクワクします。続報を待ってます!
そうか、色合いもボタンですね(笑)
千鳥、浜千鳥は少なくないけれど友千鳥、ありそうでなかったわけです。
和菓子の会、kozueさんのお力も必要かと。アイデアなど手伝ってくださいませな〜。
地方や限定の和菓子はなかなかいただく機会がないですが、美味しいものに出会えた時は幸せな気持ちになります。
和菓子については好きですが、どこどこの、とか材料製法についての知識はあまり詳しくなく。
ですが和菓子の会についてとても興味あり!です。
もし発足が実現するのでしたら参加したいと思います。よろしくお願いします。
こんにちは
いつもお読みくださってありがとうございます。
細かいことはさておき、和菓子がお好きな方達が集まる機会を作ることが出来たなら、と思っていますので、よろしければぜひご参加くださいね!
差し支えなければ、サイドバーに高由貴子プロフィール&連絡先からメールが送信できますので、そちらからご連絡いただければ、詳細が決まった際にご連絡できるかと思います。
好きな和菓子に出会ったときの幸せな気持は、宝物ですね。