蒸しあげたばかりの羊羹を竹皮にくるんだ
ふんだんな丹波産の栗が柔らかい
文化元年(1804)より御菓子づくりを始めて、
京都の姉小路に店をかまえる「亀末廣」の“竹裡”・・・
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丹波産の良質な新栗が入荷する、9月末頃から10月末か11月一週目あたりまで、
ほんのひと月ほどの間につくられる栗蒸し羊羹で、
京都“和菓子特殊銘柄品“18品のひとつです。
ことしは11月1週目で終了したと思われます。
そして“和菓子特殊銘柄品”とは物資困窮の戦時下の昭和17年、京菓子作りの伝統を守るべく京都府によって指定された18品のこと。
京都府はこの18品のために、白砂糖など特別に配給したのだそう。
京都という土地のお菓子への並々ならぬ心持ちを感じる歴史のひとつと言えます。
ほかには川端道喜の水仙粽、松屋常盤の味噌松風、笹屋伊織のどらやきなど錚々たる銘柄が選ばれています。
(参照:ウィキペディア「和菓子特殊銘柄品」)
竹皮にくるまれ、包み紙で一巻きされた“竹裡”。
この包み紙に書かれた漢詩風の文章がステキなのですが
達筆のあまり、読み難く思われるので京都造形芸術大学「瓜生通信」から一部を抜粋させていただき紹介します。
(当方の加筆部分あり〉。
「竹裡
風薫る里や千尋の竹のおく 鳳もここにすまへば
賢人も此(この)下蔭をしたふ されば 龍孫(りょうそん:筍のこと)の
ころもを以って佳味を包み 名づけて竹裡といふ
その趣致 あたかも瑞禽(ずいきん:珍しい鳥の意。鳳など)の巣こもれるが如く
隠士の遊へるに似たり 希く(こいねがはくは)は清世(太平の世)の君子 茶前
酒後の後料(ごりょう:貴人の用いるもの(飲食物など))とし て汎(ひろ)く用ひさせ給はむことを
謹みて(つつしみて)白す
竹の皮のまま薄く切りて出させ給へばお扱ひにも清々にして
取らせ給ふにも御指頭をよごさず また見るからに
雅味を添へ候
蒸したてを直ちに皮に包み候へば風に当らず随つて(したがって)
日持ちもよろしく臨時の御貯蔵 遠方のご進物に
最適に候
亀屋 末廣 謹製
京都 綾小路車屋町角」
添えられた“お召し上がり方”に
「竹皮のまま二センチ位に切ってから皮をむきお召上りください それを剥ぐように引張ってゆく指先きのうける感覚も亦得もいわれぬ味がありましょう 京・亀末廣 主人」とありますが、
後半部分を口語体にしたものなのでしょう。
竹皮に包んで蒸すのではなく
蒸し上げてすぐに竹皮に包んだ蒸し羊羹は甘さもごくごく淡く、竹裡という名にふさわしく竹の香りを楽しむひと品。
お召し上がり方に従って切り分けると、端から端まで丹波栗が万遍なくたっぷりと混ぜ込まれているのがわかります。
どこを分けても公平でありがたい。
食べる者に寄り添った菓子づくりが感じられると心も和み、味もひときわ上向きます。
蜜栗は口あたりを揃えるかのように生地と同じように柔らかくたかれているけれど甘さはほどほど。
淡味だけれど奥行ある味わいのあんとすべてがひとつにまとまった竹裡。
推測ですが、和三盆糖をそこそこ使っているのではないかしら。
いずれにしても美味しいことといったらありません。
すでに来年のことを考えてしまうほど。
とても淡味なので
「冷暗所に保存の上お早くお召し上がりください」というのは
おおげさでなく、うっかり常温で放置すると
竹の香りが「ニオイ」にかわってしまいます。
気をつけなくては。
・2010年の亀末廣の記事→※
・亀末廣 7代目店主吉田孝洋氏による「お菓子のお話」→〈外部リンク)
◎亀末廣 京都市中京区姉小路通烏丸東入ル〈京名物 百味會HP)
竹裡:3600円〈2018年〉
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栗粒が大小バラバラなのがちょっと驚きというか予想外でした。
でも包装だけでなく切り口からも風格を感じられます。
わかりづらい新着記事にコメントありがとうございます。
大小バラバラなのがむしろ風趣あるように思わせるのがさすが。おそらく早い時期なら大粒が揃うのではないかと。後半になると味はよくなるけど、粒が小さいですよね。
栗は年々、時期が早くずれて、新栗使っているところの、多くは9月に始まり10月でおしまい。引っ張って11月1週目。
茨城は早生は良かったみたい。