↑「谷中岡埜栄泉」の『三日月』生姜糖が薄雲のように見事
前回(9月21日)の続きです。
『喜久月』(台東区谷中6-1-3 火休9時〜18時)
の『ゆず餅』と同様に人気の通年菓子が
『あを梅』 。
白いんげん豆のあんに京都の白味噌を併せた
「味噌餡」を
白玉粉に抹茶を加えた
ごく柔らかい「求肥」の皮で包んだ小さな餅。
求肥好きには喜ばれる食感です。
↑左があを梅、右のゆず餅は前回紹介
ご主人考案の1950年からのロングセラーの人気菓子。
【ちなみに−昭和29年('54年)には京都での
全国菓子大博覧会(4年に一度の菓子オリンピックみたいなイベント)
というもので受賞。】
白味噌は春から夏に向かい塩気が増すそうで
これを防ぐため低温倉庫で保存するらしい。
通年の菓子にもまた細かい気遣いをする
このお店の職人の心意気が感じられます。
↓クリックね、どうやって包むのか、というほど薄い求肥の皮
と上品な味噌餡
求肥はとても柔らかいが
少し置いて引き締まったものもまたうまい。
味噌餡は塩加減がよく
これをペーストにして焼餅にも乗せたいくらい。
『干菓子』 (63円)は季節ごとに
様々で繊細な愛らしいものが並ぶけれど、
これがまた「美味しい」干菓子なのです。
「干菓子」=見た目重視=あまりおいしくない、
の図式があったけれど(私だけか)
『喜久月』のお干菓子は
見えない内側の味のおいしさにも感激、
飾りのような最中皮もぱりっとしてます。
↑こちらは夏のお干菓子、団扇の生地は「ぱりっ」と
それぞれ形によって
素材も作りも味も異なり
ちょっと疲れて「甘いもの一口だけ欲しいな」、
という時にいつも傍にあれば良いのに、
と思うくらいです。
リーズナブルこの上ないので
近所にあったら常備したいなー。
−生菓子もおいしいし引っ越す?
さて
香りの和菓子ということですが、
『谷中岡埜栄泉』(台東区谷中6-1-26 水休)
といえば『豆大福』。
(7月24日の入魂の豆大福―見てね)
が、「サブメニュー」というには
もったいない、ほかの主力菓子があります。
↑クリックね、「谷中銘菓生姜入り」の『三日月』、
店の包装紙は洒落た地図絵
夏に出回る野菜でご存知の「谷中生姜」 。
この辺りはその昔「生姜畑」の広がる上野のお山。
店の包装紙にも
付近に数あるお寺の北側に
たくさんの「しょうが畑」が描かれています。
『谷中岡埜栄泉』では「浮草」
そして『三日月』(320円)という
生姜の香り高いあん入り菓子が見逃せません。
薄く薄く焼かれた小麦粉の皮に
やや塩味のきいたしっかりしたこし餡を挟んだ
三日月型のお菓子。
皮にはとても香りの高い
白い生姜糖が三日月にかかる薄雲のように
きれいに刷いてあります。
何気ないようなお菓子だけに
それぞれのクオリティの高さが決め手。
皮の食感、あんの練り加減、塩加減、
そして何より「生姜」の香り。
↑断面です、こしあんの水分が大福と異なる
ショコラティエブームの昨今、
いろいろなスパイスのチョコレートやケーキが
すごく斬新、と言われてます。
(ジンジャークッキーとかあるのに・・)
ところが。
和菓子にも古くから
数多くの日本のスパイスや調味料類が効果的に使われて
普段着のお菓子でたくさん楽しめます。
この『三日月』にも似たものが
各和菓子店で作られているし(虎屋の「残月」など)。
ほかにも「切り山椒」とか
(大好物!今も齧りながら・・失礼)
ごぼう菓子や黄金芋の肉桂(シナモン)。
それから青海苔、よもぎ、紫蘇、薄荷、柚子、抹茶、
天塩、味噌、醤油・・
また葉で包んで香りづけするものも大変多い。
何しろ、カトラリーが「黒文字」だもんね、
銀のスプーンだって敵わないです。
↓クリックね、「切り山椒」(浅草「金龍山」)は山椒の新粉菓子
などなど
数えだしたらきりがない。
おっと、また横道に逸れてきた、
とにかく
生姜糖の風味とあんの按配が良いのです。
豆大福が売り切れてもこれがあるので
お散歩してきても落胆しないですみます。
『ゆず餅』の柚子、『あを梅』の白味噌、
そして『三日月』の生姜。
谷中にはこんな風に
風味の良い素敵な菓子が多いのです。
職人気質が培われるような土地柄なんでしょうか、
やはり上野の山には芸術の神様がいるのかな?
秋の気配、美術館に行きたくなります。
・・たまにはきれいに〆よう。